【10日目】1ヶ月で学ぶ高校地学【地球の環境と災害】

地球の環境

地球システムは、地圏(岩石圏)、水圏、大気圏、生物圏などのサブシステム(圏)から構成され、相互にエネルギーや物質のやりとりを行なっている。
例:大気圏⇆水圏(対流による熱のやりとり)、大気圏⇆地圏(熱のやりとり)、水圏⇆地圏(有機物の循環を促進)、大気圏→生物圏(酸化環境の提供)、水圏→生物圏(還元環境の提供)、地圏→生物圏(有機物の提供)など

・フィードバック

ある現象が起こり、その現象によって引き起こされた結果が、原因となったもとの現象に影響を及ぼすこと。正のフィードバックは、もとの現象を増大させ、システムを不安定にする。負のフィードバックはもとの現象を押しとどめるため、システムを安定化する。

・自然の恵み

人類圏もサブシステムの一つとして、他のサブシステムから恩恵を受けている。大気や水のエネルギーによる対流により発電を行うことでエネルギーを得たり、降水による水資源、水圏における水産資源や海底鉱物資源など、水の安定性を活かしている。また、火山は有機物の放出、温室効果ガスの放出という面で、長期的な視点で見れば不可欠な存在となっている。短期的には観光資源や地熱発電のエネルギー利用などに活用される。

・地球資源

①エネルギー資源
石炭、オイルシェール(炭田地帯で生じる、石油を取り出せる頁岩)、石油、天然ガスなど、化石燃料は再生できない。地熱・太陽光・水力・風力は無尽蔵に得られる。バイオマスは再生可能である生体構成物質の発酵によりエネルギーを得る。燃料電池は水素と酸素の化学反応によるエネルギーを利用する。水素は海水などから無尽蔵に得られるため、再生可能エネルギーと言える。
②鉱物資源
有用な元素が濃集した岩石(鉱石)を多く含み、経済的に採掘できる地質体である鉱床から得られる。クロム鉄鉱床やペグマタイト(巨晶花崗岩)などの火成作用によるもの、スカルン鉱床(鉛、亜鉛、銅が取れる)などの熱水作用によるもの、熱帯で生成されるボーキサイトなどの風化作用によるもの、縞状鉄鉱床、ウラン鉱床などの堆積作用によるものに分けられる。

・気候変動の要因

①太陽活動の変動:黒点の数は11年周期で変動する。
②小惑星の衝突
③公転軌道の離心率の変動(10万年)、地軸の傾きの変化(4.1万年)、歳差運動と近日点移動(2万年)による日射量の変化:1920年〜1930年にかけて提唱されたミランコビッチサイクルと、1970年代に有孔虫化石の分析による結果が一致した。
④極の移動、大陸移動、造山運動および、それに伴う海流変化、海水準変動
⑤大気の組成変化
⑥火山活動による遮光
⑦人間活動
地球温暖化:化石燃料の消費や森林伐採により温室効果ガスである二酸化炭素濃度が増加していることが原因と考えられている。産業革命の頃は280ppmだったが、今では400ppmに達する。気温上昇、北半球の海氷面積の現象、ヒマラヤなどの氷河の縮小、南極、シベリアやアラスカなどの永久凍土の氷が融けることによる海面上昇が予測される。
オゾンホール:フロンが紫外線の影響で塩素原子を放出し、オゾンが酸素に変化する化学反応の触媒となることでオゾン層が破壊される。南半球の春季にあたる9月〜11月に活発となる。また、ジェット気流が変化することもある。
ヒートアイランド現象:大都市の気温が郊外より高くなる現象。最低気温に顕著に現れ、冷暖房の排熱だけでなく建物からの夜間の熱放出によるものと考えられる。また、近年は夏季の昼間において、都心、内陸で気温上昇が著しい。海風の進入を妨げる高層ビル群の増加、日射の吸収率の高いアスファルト舗装の普及、冷房の排熱によるものと考えられる。
砂漠化:気候変動による干ばつ、森林伐採、灌漑、放牧など人為的な要因による。いったん砂漠化が進行すると夏季地表温度の上昇により、植生の回復は容易でない。
黄砂:冬の積雪が融けてからから夏に降水が増えるまでの春季に、土壌粒子の巻き上げが活発になるとともに、移動性低気圧の働きにより日本に飛来する。
大気汚染:大気中に浮遊する半径0.001〜10μm程度の大きさの微粒子(エーロゾル)の排出量が都市化・工業化により増加すること。PM2.5とは、エーロゾルのうち直径2.5μm以下の微小粒子のことで、吸い込むと呼吸の深部まで吸入されやすく、健康に影響をもたらす。
酸性雨:化石燃料を燃焼させる工場や、自動車などから排出された硫黄酸化物、窒素酸化物が拡散することでイオンに変化して雨滴に溶け込み、pH値5.6以下の酸性雨となる。

日本の災害

①地震災害

家屋や道路が倒壊することでライフラインが途絶されるだけでなく、火災、土砂崩れ、液状化現象、津波を引き起こすことで被害が拡大する。
液状化現象:地下水位が高い、ゆるい砂の地盤では、強い揺れが発生すると、砂同士の結合がはがれて液体のように振る舞う。これにより住居や、上水・下水システムなどのインフラに影響を与える。地震後には十分に地盤が締まることは少なく、次の地震でも液状化を起こす。
長周期地震動:地震波のうち周期が1.5〜8秒のもので、地震の規模が大きくなるほど放出されやすく、M7以上で最大になる。地震の規模が大きくなるほど揺れの継続時間は長いため、大規模な構造物が共振によって大きく揺れる可能性が高くなる。特に地面の揺れは、軟弱な地盤に閉じ込められやすく、盆地で揺れが長く続くこともある。
緊急地震速報:P波から震度予測を得る方法と、S波から震度を得る方法がある。
前者では、震源近くでP波から震源情報(震源地、発生時刻、マグニチュード)が得られると、震源からの距離による減衰を考慮することで、震度分布を推定できる。
後者では、強い揺れが観測された地点の周辺では強い揺れが同様に観測される可能性が高いという考えを利用したPLUM法(プラム法)を用いる。実際に強い揺れが観測された点の周囲30kmの範囲では同じような揺れが観測されると考え、震度を予測する。
気象庁は2018年3月から、両方の方法で震度を予測し、値の大きい方の震度を緊急地震速報で使用している。

②火山災害

噴石は基本的に火口の近くに落下する。小さな噴石は火山灰は風に流されて遠くまで堆積することがある。
火砕流:火山ガスと火山灰や火山岩塊が地表面を流れるように移動し、時速100kmをこえる速度で谷を下り、平坦な場所でも広範囲に広がる。
溶岩流:粘性が高く、歩くような速度でゆっくりと流れる。
火山泥流:活動的な火山で豪雨があると、雨水と火山灰、火山岩塊などの土砂が混ざった火山泥流が発生する。厚く雪が積もった場所で噴火があると、雪が一度にとけて融雪火山泥流が発生する。
火山ガス:二酸化硫黄、硫化水素、二酸化炭素、フッ素などの有害成分を含む。
岩屑なだれ:山体崩壊によるもの。富士山では2900年前に起こっており、頻度は高い。1889年には磐梯山で発生した。
破局噴火:カルデラで発生する、火山灰の噴出量が100立方キロメートルを超える大規模な噴火。カルデラに近い地域は広範囲が火砕流によって壊滅する。9万年前の阿蘇カルデラ、2万9000年前の姶良カルデラ、7300年前の鬼界カルデラで起こっている。
・火山噴火の予測
日本にある111の活火山のうち、特に活発な50の火山は常時観測火山に指定され、マグマの上昇による火山周辺の地表の隆起や火山性地震の発生、火山ガス濃度の増加を監視している。
噴火が始まると、空振計、遠望カメラによる観測のほかに、火山に近づいて機動観測を行い、噴火活動を予測する。
また、火山の噴火予知には人工衛星も活用され、地表に電波を照射することで変位を調べている。

③土砂災害

雨や雪どけ水などが原因となることが多い。花崗岩の地質の部分は崩れやすい。また、土砂災害が起こりやすい山の斜面や谷の出口にも住宅が多いため被害が大きくなる。
斜面崩壊:台風や集中豪雨、地震をきっかけに、急勾配の斜面で瞬時に崩壊が起こる。表層崩壊では、基盤岩との境界部分で粘着性のない砂質の土砂が崩壊する一方、深層崩壊ではそれより深い地下に滑り面ができることで大規模な崩壊が起こり、土石流に発展することも多い。
地すべり:ゆるい斜面で、斜面にたまった土砂や岩塊が元の形を保ちながらゆっくりとした速度で動く。泥のような粘着性物質が地すべりを起こしやすい。斜面の亀裂や陥没などの前兆現象があるため予知しやすい。
土石流:斜面や河床に堆積していた岩塊や土砂が水と混じり合い、高速で谷や河道を流れ下る現象。直径数mの岩塊が運ばれることもある。緩傾斜の扇状地まで流れ下るため、被害が大きくなる。

④気象災害

・台風
台風は低気圧なので、風は反時計回りに吹く。そのため、進行方向と一致して強め合う、右側の半円(危険半円)の被害が大きくなる。左側の半円(可航半円)では風速が比較的小さい。暴風域では平均風速25m/s以上の風が吹き、強風域では平均風速15m/s以上の風が吹く。予報円は、台風の中心が70%の確率で入ると予想される範囲で、気象情報では白で表示される。暴風警戒域は、台風の中心が予報円内に進んだ場合に暴風域内に入るおそれのある範囲で、気象情報では赤で表示される。
・高潮:極端な気圧低下による吸い上げ効果と、強風による海水の湾奥への吹き寄せ効果により発生する。
・集中豪雨
停滞する梅雨前線や秋雨前線、台風の接近に伴い、熱帯からの暖湿気流が流れ込むと、積乱雲による線状降水帯が形成されることがある。また、夏季に強い寒気が上空に流れ込むとゲリラ豪雨になる。
数年に一度の猛烈な雨が観測された地域に気象庁は、記録的短時間大雨情報を出す。また、大雨警報は、大雨による重大な災害の発生リスクが高まると予想される市町村に発令され、特に土砂災害の危険が高まった地域には土砂災害警戒情報が出される。数十年に一度の豪雨により甚大な災害の恐れが高まった場合、都道府県単位で特別警報が出される。
・竜巻
非常に発達した積乱雲の下では、落下する多くの雨滴に冷却された空気が下降気流を作り、地面に達すると渦が発生する。その周辺には強い上昇流を伴い、渦が立ち上がって極めて強い風をもたらす。
・雪害
シベリア高気圧と対馬海峡の影響で日本海側は、緯度の低さのわりに世界でも屈指の豪雪地帯である。山の急斜面に降った新雪や、積雪が日射を受けることで雪崩を発生させる。山間部の積雪は春に溶け出して農業用水になる一方、下流域に洪水をもたらすこともある。
除雪活動には多額の費用またはリスクがかかり、例年100人前後が亡くなっている。

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