【5日目】1ヶ月で学ぶ高校地学【侵食と堆積による地形】

侵食と堆積の種類

①風化
・物理的風化

気温の変化により鉱物が膨張・収縮を繰り返し、鉱物同士の結合がゆるむ。さらに、水の凍結や水分の蒸発に伴う結晶の晶出による膨張の圧力で岩石が破壊される。寒冷地域、乾燥地域で起こりやすく、特に花崗岩などの粗粒な鉱物からなる岩石は破壊されやすい。
花崗岩のうち、長石や黒雲母が雨水によって溶け出し、石英の粒子だけが残ったものを真砂(まさ)という。

・化学的風化

石灰岩地域では雨水と反応して、水に溶けやすい炭酸水素カルシウムができる。雨水や地下水により岩石が溶解されることで侵食される作用溶食作用といい、石灰岩の溶食では、ドリーネ(すり鉢状の窪地)、カレンフェルト(柱状の石灰岩)、鍾乳洞などのカルスト地形が見られる。

・生物的風化

根の成長による物理的風化と、根から分泌する物質による化学的風化が考えられる。

②侵食地形
・V字谷

河川が底面を侵食する力は、流速の2乗に比例する。山地では流速が速い上、けずられた礫の移動により岩盤が下方に侵食されることで、V字谷ができる。

・扇状地

河川が山地から平地に出ると流速が急に遅くなり、運搬されてきた砂礫が堆積する。洪水時に流路が低い場所に移動するため、それが繰り返されて堆積物が扇状になる。

・河岸段丘

氷期には氷河によって山が削られることで土砂が大量に生成され、扇状地において広い河原を形成する。また、間氷期には侵食が卓越する。特に隆起が起こっている場所ではこれらの繰り返しにより、何段もの河岸段丘が形成される。

・三日月湖、後背湿地

平地を流れる河川の蛇行が進むと流路の曲がった部分同士が接触し、流路が直線化する。また、氾濫原の低地は常に水がたまった状態となることがあり、後背湿地と呼ばれる。

・三角州

河川による堆積と波による侵食によってできる河口付近の地形。

・海岸段丘

波打ち際では侵食により海食崖が形成され、その部分の海底は侵食やサンゴになり平らになる(海食台)。地震による隆起や寒冷化による海面の低下により海岸段丘が現れる。
城ヶ島(三浦半島)は関東大震災のときに隆起している。このように、海岸段丘から巨大地震の活動周期を調べることができる。

・海岸地形

海進によってV字谷に海水が浸入するとリアス海岸、U字谷に海水が浸入するとフィヨルド、平地が水没すると山地だけが残り、多島海となる。
波や沿岸流で運ばれた土砂が陸から海に突き出すように堆積したものを砂嘴(さし)という。これが湾口を塞ぐと砂州となり、塞がれた湾の内側をラグーン(潟湖)という。
島の海岸に造礁サンゴが珊瑚礁をつくったものを裾礁、海進により島と珊瑚礁の間にラグーン(礁湖)ができたものを堡礁、島がなくなったものを環礁という。
砂丘は風により運搬された砂によりでき、風上側は緩く、風下側は急な傾斜になる。風上側に凸の三日月型の砂丘をバルハンといい、それが連結されることで波状の連結バルハンになることもある。

・氷河地形

氷河:降雪が圧縮され、重力によって数m〜数百m/年のゆっくりとした速度で流れる。
カール:山頂付近における、氷河における急峻な谷。氷期には日本にも氷河があり、立山連峰に見られる。
ホルン:カールによって囲まれる鋭くとがった山。マッターホルン、槍ヶ岳など。
モレーン:氷河が縮小する際、氷河の末端部や側面に、削られた岩片が堆積したもの。巨大なものは迷子石とよぶ。
擦痕:氷河が削り取った岩片が岩盤を引っかいて残る痕。氷河が動いた方向を示す。
構造土:水の凍結と融解の繰り返しにより土壌が移動することで形成される幾何学模様。

③堆積地形
・土壌

地表は、岩石が風化して鉱物粒子になったものや、運搬されてきた粒子(火山灰など)が原材料(母材)となり、そこに有機物が混合されたものを土壌という。最上位層には生物の遺骸とそれらが分解された有機物が含まれる。中間層になると泥や砂が主となり、最下層は基盤岩の岩片を礫状に含んでいる。

・堆積が起こる場所

水や氷の流れによって、沖積河川、湖沼、氷河、三角州、海浜、内湾、大陸棚、大陸斜面・縁辺域に礫・砂・泥の堆積が起こる。深海では、カルシウムイオンの飽和容量が大きくなることで、石灰質の殻は溶解する。その限界の水深を、炭酸塩補償深度(CCD)と呼ぶ(深さ4000m〜5000m)。そのため、それより深い深海では、風によって運ばれた陸由来の砕屑物からなる深海粘土だけが堆積する。それ以外の海底には、石灰質やケイ質の殻をもつ有孔虫や放散虫などのプランクトンの遺骸が遠洋域生物礁を形成する。
水のない乾燥地帯(砂漠)では、風による砂・泥の運搬・堆積が卓越する。

・堆積岩

堆積物は年月が経過するだけでなく、圧密作用脱水作用によって固化して硬い堆積岩へと変わる。この過程を続成作用という。生物遺骸の周辺ではセメンテーション(水に溶けていたCaCO3やSiO2の再結晶により隙間が充填される)が速く進み、硬いボール状の岩石が形成されることがある(ノジュール)。

①砕屑岩(ケイ質砕屑岩)

礫岩:おもに礫(粒径2mm以上)が固まったもので、隙間は砂や泥が埋める。礫が角ばったものは角礫岩という。
砂岩:砂(粒径1/16mm〜2mm)が固結したもの。粒子は角がとれて丸くなっていることが多く、隙間は方解石など他の鉱物が埋める。石材として用いられることもある。
泥岩:泥(粒径1/16mm以下)が固まったもの。その中で、1/256mm〜1/16mmの比較的大きい粒径のものをシルト岩という。また、押し固められ、板状にはがれやすくなったものを頁岩(けつがん)という。

②火砕岩(火山砕屑岩)

凝灰岩:火山灰が固まったもの。風化作用や熱の影響により色が変化したり、変質したりする。日本海側を中心に分布するグリーンタフ(緑色凝灰岩)の一部は、大谷石として建材に使用される。

③生物岩

石灰岩:CaCO3を主成分とする殻をもつフズリナ、サンゴ、ウミユリなどの遺骸が固まったもの。暖かく浅い海で形成される。
チャート:SiO2を主成分とする放散虫などの遺骸が固まったもの。硬く、割れ口が鋭利なので、石器として使用された。

④化学岩

岩塩:海水が蒸発してNaClの結晶が厚く堆積したもの。数百mの層として産出することもある。

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