【7日目】1ヶ月で学ぶ高校地学【雲が形成される理由】

地球の大気

大気の平均組成は、窒素78%、酸素21%、アルゴン0.93%、二酸化炭素0.04%の順に多い。水蒸気は地域や気象条件により変動が大きい(1%〜4%)ので、平均組成には含まれない。高度が上がるほど大気が薄くなり、一般的には100km(カーマン・ライン)が大気圏の上端とされる。国際宇宙ステーションは高度400kmを周回するが、それを大気圏に含む定義も存在する。
対流圏:0km〜約10km
地表面から離れるにつれて、気温は約0.65%/100mの割合で低下する。水蒸気が多いため、雲の発生、降水・降雪などの気象現象が起こっている。最上部では−50℃を下回る。
成層圏:約10km〜50km
オゾンが太陽からの紫外線を吸収する(O3→O2+O)ことで、気温は高度とともに0℃まで上昇する。対流圏と成層圏には、地球大気の99%以上が含まれる。
中間圏:50km〜85km
気温は高度とともに減少して、最上部は−100℃まで下回る。まれにわずうかな水蒸気が氷晶となった夜光雲が出現する。また、電離層D層からの放電現象(スプライト)が発生する。
熱圏:85km〜500km
大気分子が太陽からのX線や紫外線を吸収するため、気温は高度とともに上昇し、1000℃付近まで上昇する。大気分子の一部は原子、イオン・電子となり、電子の密度が大きい電離層が存在する。国際宇宙ステーションはこの部分に存在するが、気温(=大気分子の運動エネルギーの大きさ)が高い一方で、大気分子自体は極めて少ないため、暑くはない。オーロラや流星はこの部分に出現する。

〈補足〉大気圧について
大気圧とは、大気分子が物体に衝突することで生じる圧力。大気分子の密度と運動の激しさ(温度)に比例する。密度に比例するということは、体積に反比例するということである。例えば低気圧(周囲に比べて相対的に大気圧が低い場所)では密度が低いので、地表面付近では、周囲の大気を吸い寄せるように低気圧の部分に向けて風が吹く。また、周囲に比べて体積が大きいので、溢れた分が上昇気流となる。
詳しい原理は後の項で説明するが、このように状態方程式を利用するだけでも低気圧で上昇気流が発生するのは必然であるとわかるので、記憶の助けにはなるかもしれない。
1643年に、トリチェリによって、大気圧が76cmの水銀柱と釣り合うことが実測された。これを1atm(1気圧)といい、1013hPaである。

雲の形成

大気中に含むことができる最大の水蒸気量を飽和水蒸気量、それに対する実際の水蒸気量の割合を相対湿度という。相対湿度100%未満のときに水蒸気を含んだ空気を冷やしていくと、相対湿度が100%に達する。そのときの温度を露点という。
雲は、上昇気流の発生によって露点を下回ることで、水蒸気の一部が水滴になることで生じる。なお、空気は熱を伝えにくいので、空気が上昇していったとき、気温の低い周囲の空気に冷やされるのではなく、断熱状態で気圧が下がることで断熱膨張が起こるため、温度が下がる。

・水蒸気に含まれる「熱」

地面から空気に熱が伝わるときは、直接伝わる熱もあるが、より効率的に伝わる熱がある。水蒸気が地面から空気に移動して、それが上昇していくにつれて、冷やされて凝結することで凝結熱を放出する。これを潜熱とこれから呼ぶことにする。
この潜熱により、上昇する空気は暖められるので、その温度低下の割合は周囲の空気に比べて小さいことが多いため、上昇気流は持続しやすい。

・大気の安定性

上昇する空気塊が周囲と熱のやりとりをせず、水蒸気の凝結も起こらないときの温度が低下する割合を乾燥断熱減率といい、0.98℃/100mである。
空気塊が飽和した場合は、その割合は小さくなる。これを湿潤断熱減率といい、大気圧では0.5℃/100m程度であるが、圧力が低下するにつれて乾燥断熱減率に近づいていく。
絶対安定
地上と上空の温度差が小さく、周囲の大気の温度低下の割合が湿潤断熱減率(0.5℃/100m)よりも小さい状態。この状態ではもし空気塊が上昇すると、必ず周囲の空気より低温になるため、上昇は発生しない。
絶対不安定
地上と上空の温度差が大きく、周囲の大気の温度低下の割合が乾燥断熱減率(0.98℃/100m)よりも大きい状態。上昇する空気塊は必ず周囲の大気より高温になるため、湿度が低くても上昇が起こる。対流圏上部では気温の低下が緩やかになるので、空気塊と周囲の空気が等しくなる高度(雲頂高度)まで上昇し続ける。
条件付き不安定
周囲の大気の温度低下の割合が湿潤断熱減率よりも大きく、乾燥断熱減率よりも小さい状態。周囲の空気に比べて温度が高いことはもちろん、湿度が高い場合のみ上昇気流が発生する。

②や③の状態において「大気の状態が不安定」とよく言われ、日射で地面が暖められたとき、上空に寒気が入ることにより上空と地上の気温差があるときだけでなく、下層の空気が湿っているときは潜熱が生じるため、上昇気流が雲頂高度まで持続し、大規模な積乱雲が発達しやすい。

・フェーン現象

湿った空気塊が山脈を越えるとき、山を越える前に露点に達すると、山脈の風上側に雲を発生させて、山脈の風下側には高温で乾燥した風が吹く。乾燥断熱減率と湿潤断熱減率の違いにより同じ高度であっても山脈を挟んで温度差が生じる。

・海陸風と山谷風

陸は海に比べて暖まりやすく冷えやすいので、昼間は陸の空気が膨張することで圧力が低下し、上昇気流となり、海から陸へと風が吹く(海風)。夜には逆の現象が発生する(陸風)。
山の斜面が暖められ、谷筋よりも地表付近の気温が大きくなるため、谷から斜面へと風が吹く(谷風)。夜には斜面から谷へと風が吹く(山風)。

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