地球の運動
・地平座標
観測地点から南方向を基準として、時計回りに0°〜360°までの方位角を定義、また、地平線を基準として、天頂方向に0°〜90°までの高度を定義する。
・天の赤道:地球の赤道を天球に投影したもの。春分または秋分の日の太陽の通り道を観測地点の天球に描いた場合、そこが必ず天の赤道になる。天の北極・南極も同様に、地球の北極点・南極点(地軸)を天球に投影したものである。天の北極には、現在こぐま座のα星が北極星として存在する。
・黄道:地球の公転面を天球に投影したもの。天の赤道に対して23.4°傾いており、春分点または秋分点において、黄道は赤道に対して23.4°の角度で交わる。太陽は必ず黄道上に存在する。
・赤道座標
春分の日の太陽の位置(黄道と天の赤道の交点)を基準に、天の赤道を反時計回りに0h〜24hまでの赤経を定義する。このとき、1h=15°、1m=0.25°=15’、1s=1/240°=15″となり、赤経の1時間は角度の15度、赤経の1分は、角度の15分、赤経の1秒は角度の15秒となる。
また、天の赤道を0°とし、天の北極まで0°〜+90°、天の南極まで0°〜−90°の赤緯を定義する。
・歳差運動:地軸が公転面に対して傾いているため、傾いている地軸を引き起こそうとする力により、23.4°の傾きを保ったまま、26000年周期で地軸の方向は変わっていく。そのため、天の北極は黄道の北極を中心に26000年かけて一周しており、北極星の位置は12000年後にはこと座のベガ付近になる。その頃には天の北極・南極だけでなく、赤道座標も今とは異なるものになっているだろう。
・天体の日周運動
・周極星:北半球で考える。赤緯が(+90°−観測点の緯度)〜+90°の恒星は、天の北極を中心に反時計に周り、沈まない。
・全没星:赤緯が−90°〜(−90°+観測点の緯度)の恒星は地平線より上に昇らない。
・出没星:赤緯が(−90°+観測点の緯度)〜(+90°−観測点の緯度)の恒星は、必ず1日に1回天球上に現れる。
・地球の自転
地球上のある地点が南中を迎えてから、次に南中を迎えるまでの時間を1太陽日(一般的な1日)と定義し、24時間とする。また、任意の観測地点で太陽以外の恒星が天球上を1周する時間は地球の自転周期と一致し、これを1恒星日と定義する。地球は自転方向と同じ向きに太陽の周りを公転している(地球の北極上空から見て反時計回り)ため、1恒星日が過ぎた段階ではまだ太陽は天球上を一周しておらず、そこから地球が約1°自転することで一周に達する。これにかかる時間は4分であり、1太陽日の定義と合わせて、地球の自転周期は23時間56分ということになる。
・平均太陽時
地球の公転が楕円軌道であり、速度が一定ではないことだけでなく、天の赤道と黄道のずれ自体が南中時刻のずれを生む。そのため、1太陽日により24時間を定義するためには、その平均を取る必要がある。1太陽日の平均を24時間とする時間の定義を、平均太陽時という。これに基づく南中時刻は、実際の南中時刻と最大15分ずれ、その差を均時差という。
・暦と時刻
・太陰暦:月が地球のまわりを1周する29.5日を1ヶ月とした。1年が354日となるため、季節がずれる。
・太陰太陽暦:太陰暦に対して19年に7回うるう月を入れて、季節のずれを調整した。(旧暦)
・太陽暦:平均太陽時を使うと、地球が太陽のまわりを1周する1太陽年は365.2422日となるため、うるう年により調整する。
現在はセシウム原子時計による国際原子時をもとに、協定世界時(UTC)を定める。これが実際の地球の公転とずれないように、1972年以降うるう秒によって調整している。地球の自転速度は月の潮汐力、海流、地震の影響でも変化し、かつての自転周期は今より短かった。
・地球の公転
・年周視差:近い恒星は遠い恒星に対して見かけの位置が1年周期でわずかにずれる。黄道付近の恒星は直線上、黄道の極付近では円上、それ以外の場所では楕円上を移動する。1年間のずれの半分を年周視差といい、そのずれが1秒=1/3600°となるような恒星までの距離を1パーセク(pc)と定義する。秒とパーセクは反比例の関係にある。
・ドップラー効果:地球が恒星に近づく方向に公転しているときには恒星の波長は短くなり、遠ざかる方向に公転しているときには恒星の波長は長くなる。地球の公転の速さ(30km/s)がわかる。
・年収光行差:光の速度は有限であるため、恒星の光が見える方向は、実際の方向に対して、地球が公転している向きにわずかにずれて見える。
惑星の運動
・ケプラーの法則
第1法則:太陽は惑星の楕円軌道の焦点の1つに位置する。
第2法則:面積速度一定(単位時間あたりの、惑星が移動することで、太陽とを結ぶ直線が通過する面積は一定)
第3法則:太陽からの平均距離(楕円軌道の長半径)の3乗は公転周期の2乗に比例し、その比例定数は恒星の質量によるものである。つまり、同じ恒星を周る惑星に対して一定である。
・惑星の視運動
惑星の公転面は地球の公転面とだいたい同じであり、黄道付近を移動している。地球の公転周期をE、外惑星の公転周期をO、内惑星の公転周期をIとすると、ケプラー第2法則により、I<E<Oが成り立つので、地球と最接近する周期(会合周期)をSとすると、外惑星については1/S=1/E−1/O、内惑星については1/S=1/I−1/Eがそれぞれ成り立つ。外惑星の遠日点を合、近日点を衝といい、内惑星の遠日点を外合、近日点を内合という。
外惑星については、衝の前後で逆行が生じ、普段は日毎に西から東に移動していくが、衝のときには日毎に東から西に移動する。順行と逆行が切り替わるときを留という。
金星は内合のときは新月となり見えないが、その前後では三日月となり大きく見える。地球、金星、太陽がなす角が直角になったときの、地球から見たときの金星の太陽に対する角度を最大離角といい、このとき金星は半月になる。
金星の公転方向は地球の自転方向、公転方向と一致しているため、外合→内合では太陽の東側、内合→外合では太陽の西側に現れる。前者は太陽の沈んだ後に見えるため宵の明星、後者は太陽が昇る前に見えるため明けの明星と呼ばれる。
地球のかたち
・ジオイド面と地球楕円体
山の高さは、重力の大きさにより定義される。海面と重力が等しくなるような面(ジオイド面)を考え、それを標高0mとする。ジオイド面は、地球楕円体に近似される。
地球の断面は楕円であり、その扁平率:(赤道半径−極半径)/赤道半径は1/298である。このため、極付近の標高0m地点と、赤道付近の標高0m地点の重力はことなり、極付近の方が大きくなる。
また、高緯度では楕円の弧の曲率半径が大きくなるため、緯度1°の長さは大きくなり、その差は1km程度になる。
・地球の高度分布とアイソスタシー
地球表面の高度の分布は、−5km〜−4km、0km〜1kmの2ヶ所にピークが存在する。密度の異なる海洋プレートと大陸プレートの存在を反映している。
マントルは長い時間では流体としてふるまい、等深面上にのっている物質の重さはどこでも等しくなる。そのため、大陸地殻の下部は海洋地殻の下部に比べて深く沈み込む。
海洋地殻:2.8g/㎤、大陸地殻下部:2.9g/㎤、大陸地殻:2.7g/㎤、上部マントル:3.6g/㎤
例:最終氷期に厚い氷で覆われていたスカンジナヴィア半島は、1万年前に300m隆起している。
・重力異常
重力の測定値は、測定場所の高さ、地形、地下の構造の影響で標準重力からずれるため、ジオイド面上の値に変換する重力補正を行う。重力の実測値を補正した値と標準重力との差がある場合、ブーゲー異常と呼ぶ。
大陸地殻は密度が小さく、ブーゲー異常で負の値、太平洋プレートやフィリピン海プレートでは正の値をもつ傾向がある。ほかに、密度が大きい鉱床、背斜構造構造では正、陥没した基盤(日向灘沖の九州・パラオ海嶺沈み込み、北部フォッサマグナなど)では負の重力異常が観測される。
・地殻の構造
大陸地殻は、上部は花崗岩質、下部は玄武岩質の岩石からなり、モホ不連続面(地震波の速度が急激に大きくなる面)でかんらん岩質の上部マントルに接する。玄武岩質の海洋地殻も同様である。
・内部構造の推定
地殻、上部マントルの組成は測定可能である一方で、下部マントル、外核、内核の組成は推定となる。炭素質隕石の組成と太陽の大気組成が類似することから、地球全体の組成をそれらをもとに推定することで、核の組成を推定できる。一方で、下部マントルは上部マントルと結晶構造が変化し、密度の不連続面も存在することから、誤差がまだ大きく、内部温度の推定も難しい。
・地球全体の組成:O、Fe、Si、Mgが大部分。
・マントルの組成:O、Mg、Si、Ca、Al
・地殻の組成:O、Si、Al、Fe、Ca、Mg
・核の組成:Feが大部分、Si、Ni、O
・地震波の種類
・P波:媒質の振動方向と波の進行方向が同じ縦波で、圧縮・膨張により伝わる。地表付近では5〜7km/s。
・シャドーゾーン:P波は核−マントル境界で下に屈折するため、地表に届かない領域が存在する。
・S波:横波で、媒質のゆがみを伴いながら伝わる。地表付近では3〜4km/s。弾性がない液体中は伝わらない。そのため、シャドーゾーンを含め、外核に遮られる部分の地表に届かない領域が存在する。
・表面波:地震波が地球内部から地球表面に到達すると、地表面をレーリー波やラブ波によって鉛直方向にも水平方向にもゆがめる。表面付近でのみ伝わるため減衰しにくく、東北地方太平洋沖地震では地球を7周した。3km/s程度。
・地磁気
外核が液体の金属で流動的であるため、ダイナモ作用により電磁気が発生する。この磁場は、自転軸から10°傾いた巨大な棒磁石がつくる磁場に近似される双極子磁場である。磁力の向きは南磁極から北磁極で、地面に対する全磁力の角を、北半球で正になるような伏角で定義する。
また、必ずしも経線と同じ方向に水平分力が向くわけではなく、真北に対する角度を偏角で定義する。
プレートテクトニクス
・地球の熱収支
地球内部から地表へ伝わる熱の量を地殻熱流量といい、地温勾配に比例する。マントル物質やマグマが上昇することでプレートが引き裂かれる海嶺に沿って大きい。一方で、大陸では放射性発熱量が大きく、地球内部の放射性物質の崩壊による発熱と、地球形成時の衝突のエネルギーが変換された熱に由来している。
・大陸移動説
ウェゲナーが提唱した。石炭紀の氷床が、南アメリカ、アフリカ、インド、オーストラリアに分布することから、これらが一つの大陸だったと仮定できる。大陸移動の原動力は解明されなかった。
・海洋底拡大説
海底の岩石の年代測定を地磁気により行うことで、中央海嶺を中心に左右対称になっていることが証拠となった。また、インド大陸の移動は、堆積残留磁気の伏角変化により示された。
・ホットスポット
天皇海山列とハワイ諸島の連なりは、ホットスポットの存在と、プレートの移動を意味する。
・プレートの境界
・発散境界:中央海嶺では、プレートが引き裂かれてマントルが上昇し、圧力低下によりマントル自体が部分融解することでマグマとなる。これが海底に噴出して海洋地殻となる。マグマが抜けたマントルは、リソスフェア(厚さ100km)の下部となり、プレートの一部を形成する。海嶺付近には枕状溶岩が存在。
・すれ違い境界:中央海嶺の中軸谷(発散境界)は断裂帯で分断されており、その部分では両側のプレートが逆向きに移動するため、横ずれ断層(トランスフォーム断層)となる。カリフォルニア半島北部のサンアンドレアス断層は、これが地上に現れたものである。
・収束境界:大陸プレートの下に海洋プレートが沈み込むと、島弧−海溝系を形成する。海洋プレートは沈み込むと含んでいた水を放出し岩石の融点を下げることで下部地殻が部分融解することでマグマとなる。これが火山となり、島弧を形成する。
大陸プレート同士が衝突すると、双方とも軽いため沈み込めず、衝突帯として厚い地殻構造、褶曲山脈、断層を形成する。