【9日目】1ヶ月で学ぶ高校地学【大気と海洋、潮汐】

海洋の構造

海水中の成分は、ほとんど電離した形で存在する。Cl -(55.05%)、Na +(30.62%)、SO4 2-(7.68%)、Mg 2+(3.69%)、Ca 2+(1.16%)、K +(1.10%)などが含まれ、このうち陰イオンは火山ガスに多く含まれる成分で、火山噴火や海底の熱水噴出により供給された。陽イオンは火成岩に多く含まれる成分で、酸性だったときの海が溶かしたり、陸上の火成岩の風化などにより供給された。海水から得られる塩類は、NaCl(77.9%)のほかに、MgCl2、MgSO4、CaSO4、KClなどがある。

・海洋の層構造

水深100mまでは表層混合層と呼ばれ、海面を吹く風によって海水がかき混ぜられたり、海面で冷やされた海水が沈降したりすることにより、海水は上下によく混合され、水温が一様になる。中緯度や高緯度では、夏にこの働きが弱まり、表層混合層が薄くなるとともに、急激に水温が下がる季節水温躍層が形成される。
水深100m〜500mには主水温躍層が存在し、熱帯や中緯度では500mより深い、低温の深層に向けて水温が急激に下がる。そのため、深層には緯度による温度差が小さく、「基本的には」流れが生じにくい。
また、冬季や高緯度域の表層では日射が弱く海水が上下方向に混合されるため、塩分濃度の変化も小さくなる。

大気と海洋の関係

広い範囲の海上を一様な風が長時間吹き続けると、表面の海水は風向に対して(北半球では)右に45°ずれて流れる。深さ数十mまで(エクマン層)は深くなるにつれて流れが右にずれながら小さくなり、全体では風向に対して直角右向きの流れになる。これをエクマン輸送といい、このはたらきによる流れをエクマン吹送流(すいそうりゅう)という。海上に高気圧があるとエクマン吹送流が中央部に収束して海面が盛り上がり、海面付近では下降運動が生じる(エクマン収束)。

・地衡流

亜熱帯高気圧におおわれる海域では海面が盛り上がっている。そのため、高圧部から低圧部には水圧の傾度力が生じ、流れはコリオリ力とつり合うように、高圧部が右手(北半球)に来るように地衡流が流れる。流速は海面高度の傾斜の大きさに比例する。
亜熱帯高気圧の北側では偏西風により風が強められて東に大きく流される。また、南側では貿易風により風が強められて西に大きく流される。そのため、西側では強い流れで北上する暖流ができる。これを西岸境界流という。日本海流(黒潮)など。
一方で、大洋の東側では亜熱帯高気圧の中心があり、赤道向きに吹く季節風が強い。これによりエクマン輸送が大きくなるため、表層で失われた海水を補い深い所から水温の低い水が湧き上がる(沿岸湧昇)。さらに、赤道付近では貿易風によるエクマン輸送で、赤道から離れる方向に流れる。それを補うため赤道湧昇が起こる。これらによりペルー沿岸など、熱帯の太平洋東部で明らかに海面水温が低くなる。

・異常気象

貿易風が弱まると赤道湧昇が弱まり、太平洋東部の海面水温が高くなる。積乱雲の活動域が太平洋中部に移るとともに、日本のように離れた場所に冷夏・暖冬をもたらす(テレコネクション)。これをエルニーニョという。逆の現象をラニーニャという。
熱帯太平洋の西部と東部における気圧差は減少するほど貿易風は弱まり、水温差もそれに伴い減少する。これにより一方の海面気圧や水温が平年より高いときは、もう一方が平年より低くなる。これを南方振動という。このような海水温、気圧の相互関係を示す現象をまとめて、エルニーニョ・南方振動(ENSO)という。

・海洋の大循環

①風成循環
海上風によって引き起こされる海洋表層の循環。亜熱帯高圧帯に伴う亜熱帯循環系の他に、その北側に存在する反時計回りの亜寒帯循環系、南極大陸を西から東に一周する南極周曲流が存在する。
黒潮は2m/sを超えることもある、亜熱帯循環系における西岸境界流である。対馬海流はそれが分岐した暖流であり、冬の日本海側に雪をもたらす。一方、親潮(千島海流)は亜寒帯循環系の一部をなす寒流である。また、亜寒帯循環系はアリューシャン低気圧に対応しており、海面高度が低くなっている。
②熱塩循環
北大西洋北部のグリーンランド近海や、南極近海では海上の気温が低いため海氷が形成される。海水は塩類を排除しながら凍るため、付近の海水は水温の低下と塩分の増加によって密度が大きくなり、深層へ沈み込む。特に大西洋中央部は蒸発量が多いわりに降水量が少なく、大河川への流れこみも少ないため、表層の塩分が高く、沈み込みが促進される。
太平洋の深層流は南極を西から東に流れる深層流から分岐しており、海水が沈み込んでから1500年経っていることが、放射性炭素法により分かっている。
このように、大気と遮断され、緯度による温度差も小さい海洋深層に熱や酸素、二酸化炭素などの大気成分を運ぶ循環のしくみをコンベアーベルトと呼ぶ。

・流氷

河口付近では淡水が流れ込むため、塩分が少ない。そのため氷点が比較的高くなり、海氷が形成されやすい。それが沿岸から離れて漂ったものを流氷という。

・降水量と蒸発量

暖流域や亜熱帯では降水量より蒸発量が多い(高気圧が発達しやすい)。
熱帯収束帯や中緯度の海上では低気圧が頻繁に発達するため、蒸発量より降水量が多い。低温で飽和水蒸気量が少ない高緯度域では、蒸発量も降水量も少ない。つまり、亜熱帯域からそれ以外の地域へ、大気循環により水蒸気が輸送されている。
なお、地球全体では河川の流れ込みがあるため、海からの蒸発量の方が降水量より大きくなってつり合っている。

波と潮汐

風が吹いている領域では、波長・波高が不揃いで、とがった波が多数生じる。これを風浪といい、風の吹き続ける時間、吹きつける距離、風速が大きいほど、波長も波高も大きくなる。風浪が風域を出るか、風が弱まると、短い波長の波は急速に衰え、なだらかな峰をもち波長・波高がそろったうねりが残る。
このうねりが海岸に近づくと、「水深が深いほど速い」という長波の性質が成り立ち、海岸線に近づくにつれて後ろの波が追いついてくるため、どの向きから来た波も、海岸線に平行な波となあって打ち寄せる。
津波は長波とみなせ、深海で発生するとジェット機の速さに匹敵する。波長は数十kmに及ぶ。海岸付近では波が遅くなるため、波長が短く圧縮され、その分だけ波高は高くなる。

・波の性質

波が伝わるとき、水はその場で円運動または楕円運動をしている。この影響は水深が深い所ほど小さくなり、風浪などの表面波は水深10m程度までが影響する。表面波の進む速さは、V=gT/2πとなり、円運動の周期に比例する。
一方、海底の深さに比べて波長が長い場合は長波として、速さはV=√ghとなり、水深の1/2乗に比例する。

・潮汐

潮汐は、月との万有引力と、月との重心まわりの円運動による、月と反対向きの遠心力によりもたらされ、それらの合力を起潮力という。遠心力は地球上どの地点でも等しいのに対し、万有引力は月に面した側とその反対側で差があるため、その2ヶ所で相対的に海水面が高くなる。それにより、地球の自転とともに1日に2回満潮と干潮を繰り返すことになる。
特に新月と満月のときは、月による起潮力と太陽による起潮力の向きが一致するため、満潮と干潮の潮位差は最大となる(大潮)。上弦、下弦のときは太陽による起潮力が月による起潮力を弱め、潮位差は小さくなる(小潮)。

・潮流

狭い海峡で外海と区切られた海域では、潮汐に伴う海水の流出入で強い潮流が生じる。鳴門海峡の渦潮は潮流が狭い海峡を通ることで引き起こされる。このような流れは長波としての性質をもち、有明海などの浅い湾では潮位差が大きくなる。つまり潮汐は、「波長が極めて長い津波」と言える。

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