プロローグ 空間から時間へ

この空間をエネルギーが伝わる速さは常に一定である。それは宇宙における速度の上限であり、光速と呼ばれる。

動いている物体を光が追いかけるとき、エネルギーを伝えるためには光速よりも大きな速さを必要とするように思えるが、実際には動いている物体にも光速でエネルギーが伝わる。

この事実からは、運動エネルギーを持つ物体にとっては空間が縮んでいるということが導かれる。これを一般化すると、ある場所のエネルギーが高ければ高いほど空間は小さく縮むということになる。この考え方は相対性理論に基づいている。

エネルギーが高い状態が永遠に保たれることはなく、必ずエネルギーが低い状態へと変化していく。それに伴って空間が膨張していくと考えると、過去には空間の大きさが極限まで小さい時期があったということになる。しかし、その状態を実現するためには最初に極限まで大きいエネルギーを与える必要がある。

宇宙は何もない場所から誕生し、その大きさは0だった。このような空間と時間の区別がつかないほど小さな領域では、トンネル効果と呼ばれる現象により、そのエネルギーの山を一定確率で越えることができる。これにより生じた空間はエネルギーを獲得し、その真空エネルギーは急速に外部へと伝播していった。これはインフレーションと呼ばれる。

止まっていた時の流れは、この瞬間に動き出したのである。

エピソード1 エネルギーを伝える力
インフレーションの直後は真空のエネルギーで満たされた空間が存在しており、そこから生じた素粒子が光速で飛び交っていた。ビッグバンである。インフレーションにおける空間の発展には量子的なゆらぎが存在しており、インフレーションが終了する時...
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