エピソード1 エネルギーを伝える力

インフレーションの直後は真空のエネルギーで満たされた空間が存在しており、そこから生じた素粒子が光速で飛び交っていた。ビッグバンである。

インフレーションにおける空間の発展には量子的なゆらぎが存在しており、インフレーションが終了する時期は場所によって異なっていた。長い時間インフレーションが継続した場所は相対的に高いエネルギーを獲得したため、空間の歪みは相対的に大きくなり、重力を発生させた。このとき生じた空間の不均質性は今後、密度ゆらぎとして成長していくことになる。

空間の急激な膨張によりエネルギーが遠方へと伝播しにくくなったことで、近傍の素粒子とのエネルギーの交換が起こるようになり、一部の素粒子同士が結びつくこととなった。このとき生じた力は強い力と呼ばれ、グルーオンと呼ばれるボソンが担っている。宇宙誕生から10のマイナス36乗秒が経過していた。

さらに、多くの素粒子はヒッグス粒子と結びつくことで質量を獲得した。これによりエネルギーから対生成されたフェルミオンの粒子と反粒子に崩壊速度の違いが生まれたことで、物質の一部は反物質と対消滅せずに残った。このとき質量を持つウィークボソンが形成され、クォークとの反応により電子やニュートリノなどのレプトンを発生させた。このとき生じた力は弱い力と呼ばれている。一方で光子は質量を持たなかったため、それ以外の質量を持つ素粒子に運動エネルギーを与えた。このとき生じた力は電磁力と呼ばれている。宇宙誕生から10のマイナス11乗秒が経過していた。

この時点でグルーオン、ウィークボソン、光子やヒッグス粒子などのボソンおよび、クォーク、レプトンなどのフェルミオンといった素粒子が全て揃い、宇宙の進化はこれらの物質が担っていくこととなった。これによりインフレーションで生じた莫大なエネルギーの一部は質量という形で保持され、宇宙のさらなる発展を促した。

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