エピソード2 宇宙を満たした物質

クォークと反クォークは対生成と対消滅を繰り返していたが、温度の低下に伴い対生成が起こらなくなると対消滅していった。対消滅を経てわずかに残ったクォークはグルーオンによる強い力で結びつき、陽子や中性子といったハドロンを形成する。これにより、ヒッグス粒子による質量よりも十分大きな質量を獲得する。これは宇宙誕生から10のマイナス4乗秒後である。

この時点で、弱い力によって中性子と電子ニュートリノが陽子と電子になる反応が平衡を保っていたが、温度の低下により中性子はより質量の小さい陽子へと変換されていき、中性子は急激に減少していった。しかし、宇宙の膨張に伴ってその反応が停止したことで、陽子と中性子が4:1の比率で凍結された。

さらにニュートリノの対生成と対消滅の平衡反応についても同様に反応が停止したことで、反応後に対消滅することなく残存した。これは宇宙誕生から3秒後までに起こった。ダークマターも同様の原理により対消滅することなく残存したと考えられる。これはニュートリノに比べて大きな質量を持ち、ニュートラリーノと呼ばれる未知のフェルミオンであると考えられる。

電子と陽電子は温度の低下に伴い対生成が起こらなくなったことで対消滅して光子となり、わずかに電子が残った。宇宙誕生から100秒後である。

一方で陽子と中性子は強い力により核融合を起こし、重水素を生成する。さらに重水素の融合により三重水素やヘリウムが生成される。最終的にはヘリウムの融合によりリチウムおよびわずかなベリリウム、炭素、窒素が生成される。この反応は宇宙誕生の10分後までに終了し、その5分後には単独で存在していた中性子がβ崩壊により陽子となる。その結果、中性子のほとんどはヘリウムの原子核に取り込まれて存在することになった。

ここまでの反応により、宇宙には陽子、電子、ヘリウムなどの通常の物質、光子などの通常の素粒子、ニュートリノやダークマターなどの特殊な素粒子が生成された。これらの材料は重力によって集まり、やがて星が作られていく。

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