エピローグ 無へと還る宇宙

天の川銀河は20億年後には大マゼラン雲、40億年後にはアンドロメダ銀河と衝突すると考えられる。これにより規則的に回転運動していた星は不規則に運動することとなり、楕円銀河を形成する。やがてその中心部に存在するブラックホールが銀河内部のガスを加熱して星の形成が妨げられることで、新たに星が誕生することはなくなると考えられる。

種族Ⅱの恒星は質量が大きく寿命が短い一方で、超新星爆発により新たな恒星を誕生させた。それに対して、種族Ⅰの恒星は質量が小さく寿命が長い。太陽質量の8倍程度までの恒星は、中心部における水素の核融合の終了に伴って重力により収縮し、そのエネルギーにより外層での水素の核融合が開始する。これにより恒星は膨張して赤色巨星となる。

やがて外層は核融合による圧力が重力を上回ることで拡散していき、中心部から照射される紫外線により照らされて可視光線を放射する惑星状星雲を形成する。中心部は炭素や酸素まで核融合反応が進行するが、それが終了すると重力により収縮した電子が弱い力により保たれた白色矮星が形成される。

銀河を作る恒星のほとんどは白色矮星になると考えられ、それらは1000兆年以上かけて冷えていくことで、やがて光を発しない黒色矮星となる。宇宙に存在している星はやがて死に、ブラックホールのみが残される。

通常の恒星は重力と核融合によるエネルギーが釣り合って保たれている。また、白色矮星は重力と電子間に働く弱い力による圧力が釣り合って保たれている。さらに、中性子星は重力と中性子間に働く強い力による圧力が釣り合って保たれている。しかし、ブラックホールは非常に大きな重力により弱い力も強い力も振り切って収縮してしまう。

極限まで小さくなった先に存在するのが真空エネルギーである。ブラックホールは重力と真空エネルギーが釣り合うことで保たれ、そこから発生した真空エネルギーは、それまで減速していた宇宙の膨張を加速させた。これがダークエネルギーの候補の一つである。これによりブラックホールは宇宙の加速膨張と連動して、新たに星が誕生しなくなった銀河の中でも成長を続けることとなった。

仮にダークエネルギーによる膨張が光速を超えるとエネルギーの伝達が不可能となるために物質は空間ごと破壊されることになる。これはビッグ・リップと呼ばれる。宇宙の未来としてはそれ以外に、ブラックホールが蒸発することで素粒子のみが宇宙に飛び交うビッグ・フリーズと呼ばれる状態が考えられている。いずれにせよ宇宙は無へと還っていくということだ。

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