地震(地学基礎)
プレートの動きなどによる地下のひずみ(圧縮)が、断層のずれとして短時間で解放される現象。
巨大地震では、破壊開始点である震源から、断層面にそって破壊が連鎖していき、最終的に断層がずれた領域を震源域と呼ぶ。東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の震源域は、三陸沖から鹿島沖までわたった。
内陸で起こる大地震の破壊開始点は深さ15km程度だが、断層のずれが地表まで伝播する場合があり、その場合地表でずれを確認できる。
・異常震域
プレート内で深発地震が発生すると、地震波の一部が海洋プレート内に閉じ込められて、関東地方で大きく、長い地面の揺れが観測されることがある。
・マグニチュードの算出
地震モーメント:M(N・m)とすると、
M=剛性率(N/㎡)×断層の総面積(㎡)×断層のずれの平均(m)
により求めることができる。また、モーメントマグニチュード:Mwとすると、
Mw=(log10(M)−9.1)/1.5
により求められる。マグニチュードが1大きくなると地震モーメントは10√10倍(約32倍)となる。
・気象庁マグニチュード
小さい地震は地面の速度の最大振幅、中くらい〜大きい地震は地面の変位の最大振幅を地震計で観測した値を、震源付近での地震動の強さに換算して求める。この方法ではM9クラスの規模を正確に算出できないので、モーメントマグニチュードが代用されることもある(東北地方太平洋沖地震はMw=9.0)。
・地震のメカニズム
3点の震源までの距離を計算することで、震央の位置を求めることができる。震源までの距離:D(km)とすると、
D=kT(k:比例定数6〜8km/s、T:初期微動継続時間(s))
により求めることができる。
断層の法線を境に、断層が動く方向は押し波から振動が始まり、逆方向は引き波から振動が始まる。P波は震源方向に放射状の波となり、S波は接線方向の波となる。このように振動が始まる向きを複数箇所の地震計で観測することで、関連する断層を推定できる。
・正断層と逆断層
正断層は水平方向が震源方向からの押し波となっており、水平方向に引っ張られるような力がはたらく。
逆断層は水平方向が震源方向への引き波となっており、水平方向に圧縮する力がはたらく。
・地震の種類
①プレート間地震
最大規模はM9で、巨大地震となる場合がある。規模が大きいものは津波を引き起こす。逆断層。
②アウターライズ地震
海溝に沈み込む手前の海洋プレートで発生する正断層の地震。浅いところで規模の大きい地震が発生すると津波を引き起こす。
③スラブ内地震
沈み込む海洋プレート(スラブ)内で発生する正断層または逆断層の地震。300kmより深い震源の深発地震では異常震域が観測される。
④内陸活断層で発生する地震
東北日本では逆断層、西日本では横ずれ断層が多い。懸念されている首都直下地震はこのタイプであるが、相模トラフ内の地震でも震源が南関東直下であれば、首都直下地震ということになる。
⑤火山性地震
最大規模はM6、群発して発生する場合が多い。火山噴火と関係している場合がある。
・地震の分布
正断層地震は中央海嶺周辺に多いのが特徴。カリフォルニア半島付近は横ずれ断層の割合が多い(サンアンドレアス断層など)。
・深発地震面
沈みこむプレートの構造を反映して深発地震面は面状に分布する。1927年に和達清夫によって明らかにされ、今では和達−ベニロフ帯と呼ばれている。
地震が発生する領域は上下に2面存在し、これを二重深発地震面と呼ぶ。
・アスペリティ
プレート境界には、ゆっくりとずれる領域と2つのプレートがくっついている領域(アスペリティ)があり、後者ではひずみが蓄積され、地震時に一気に解放される部分もあれば、ゆっくりとしたすべりで解放される部分もある。この部分を、地殻変動を調べることで見つけ、地震の予測に活用する。
・活断層地形
活断層が繰り返し活動すると、断層を横切る川を曲げたり、尾根をずらしたりする。衛星写真や空中写真で直線的な模様(リニアメント)が見つかると、活断層の可能性がある。
なお、活断層は最近数十万年間に繰り返し活動した地震断層で、今後も活動する可能性があるものをいい、リニアメントが必ずしも現在の活断層を示すとは限らない(例:南部フォッサマグナ)。
・地殻変動
短期的な地殻変動を観測することで、海溝に垂直な方向の運動から巨大地震の前兆が観測される。GNSS測量によって観測でき、ジオイド(重力の大きさが平均海水面と同じ場所)の高さが高精度で得られる近年では、鉛直方向の変動、標高の測量を、水準測量に代わって効率的に行える。
・横ずれ断層のディレクティビティ(指向性)
横ずれ断層の破壊領域が拡大することで、その方向のS波は、ドップラー効果の原理により、振幅が大きくなる。そのため、破壊が伝播した方向の延長線上の地域で線状に大きな被害が発生する(兵庫県南部地震、熊本地震)。
・巨大プレート間地震の発生
東北地方太平洋沖地震ではアスペリティが広範囲にわたり、北米プレートが太平洋プレートに引きずりこまれていたため、西方向の変位が観測されていた。巨大地震に成長するためには、アスペリティが広範囲にわたり、同じようなひずみが蓄積していることが条件となる。巨大地震時まで沈降が続く一方で、地震後には隆起し続けており、長い時間では、三陸海岸で隆起が卓越する。
・首都直下地震の可能性
内陸活断層で発生する地震は、プレート間地震に比べて巨大になる確率は小さいが、日本全国、基本的にどのような場所でも発生する可能性を持っており、特に震源が都市部になると被害が大きくなる。首都直下は、太平洋プレート、フィリピン海プレート、北米プレートが複雑に接しており、活断層は立川断層帯のように地上に現れて観測できるものだけとは限らない。その証拠に、大正関東大震災(相模トラフ)では、プレート間地震に誘発されて関東地方のさまざまな場所で地震が発生した。
以下の動画は、関東大震災が現在起こったときのテレビ放送をシミュレーションしている。相模トラフにおける地震は切迫していないが、内陸活断層による首都直下型地震はいつ発生してもおかしくない。
※音量注意