2018年3月5日から翌6日にかけて、私は廃止直前の三江線を訪れた。現在写真整理中につき、写真の添付は10月中になるが、自分なりに山陰の活性化について考えてみたので、文章のみの投稿をさせていただく。
東京からのアクセス手段を考察する
現在廃止となっている三江線沿線を含め、島根県へのアクセスには、複数の手段がある。アクセス手段は訪れる観光地や、旅行スタイルにも依存するので、考えられるパターンをいくつか挙げていこうと思う。
①松江方面空路
松江への飛行機によるアクセスは、ANAでは米子空港、JALでは出雲空港となっている。なお、両者から松江市街地へは、松江一畑交通による空港連絡バスが出ている(米子空港間は日ノ丸ハイヤーとの共同運行)。なお、株主優待券などの割引を利用しない場合は、夜行バスや、鉄道といった選択肢が有利。
②出雲大社アクセス
バスタ新宿19時40分発の夜行バスにより、9時過ぎに出雲大社に到着することが可能である。羽田から出雲空港への始発便でも9時台の到着が可能である。サンライズ出雲の終着出雲市駅の到着は9時58分であり、10時台の到着は避けられない。なお、米子空港からは松江への空港連絡バスと、一畑電車の乗り継ぎにより、10時台の到着が可能である。
③浜田鉄道部(東部)の利用
JR西日本には、ローカル線活性化の一環として、整備や企画を取り仕切る「鉄道部」を導入している。浜田鉄道部は、山陰本線の田儀~益田を管理している。そのうち浜田以東には、三瓶山や石見銀山などにバスでアクセスができる大田市駅などがある。大田市、温泉津、三瓶山の観光が目的であれば、JAL:出雲空港から出雲市駅へのバス、夜行:出雲市から益田方面の特急または快速アクアライナー、ANA:米子空港から松江駅へのバスの利用により、山陰本線に乗るルートが最速となる。
④高速バス「石見銀山号」の利用
世界遺産「石見銀山遺跡とその文化的景観」の観光目的であれば、広島空港から広島駅を経由して大田市行の高速バスに乗ると12時頃の到着が可能である。羽田空港7時発であれば、ANA、JALともに8時20分広島空港着の便がある。廃止された三江線の石見川本駅にも途中立ち寄る。
⑤石見萩空港、山口宇部空港の利用
ANAユーザーであれば、浜田鉄道部の浜田以西および津和野の観光に石見萩空港が使える。津和野については、山口宇部空港から新山口駅までの連絡バスや、山陽新幹線を利用して、山口線経由というルートも考えられる。スターフライヤーなどの空路であれば、割引運賃を利用することで新幹線よりも安く新山口駅まで行ける。個人的には、「SLやまぐち」の運行日を狙って行ってみたい。
以上、島根県への様々なアクセス方法を紹介したが、私が友人とともに江津に行ったときは、友人のお父さんがANAの株主優待券を譲っていただけるとのことで、米子空港経由となった。三江線を浜原駅周辺で撮影するため、大田市から江津まで特急列車を利用したのだが、江津駅に特急列車乗り継ぎだけで行くとなると、「東京から一番遠い」と称されるほど時間がかかる。そのとき初めて、今まで青春18きっぷメインで鉄道による移動しか頭に無かった自分に、飛行機という手段が加わったのである。今では国内の乗りつぶしの効率化のためにマイルを貯めている最中だ。
一口コラム 〈旧三江線沿線の交通事情〉
浜原駅周辺で無事友人とともに撮影を終え、タクシー会社の多い粕淵駅周辺に向かい、三瓶山周辺の旅館を目指そうとした。ところが、タクシーは見当たらず、電話をかけても繋がらないか、手配不能とのことだった。地元の方々の生活の足でもあり、予約は前日にするのが必須だ。準備不足だった。また、油断もあった。粕淵駅から三瓶山は、地図上では距離がなく、タクシーも当日予約で十分だろうと考えていた。しかし、そもそも美郷町と大田市の間には、粕淵駅と大田市駅を直接結ぶバスしかなかった。大田市の外れにある三瓶山に直接アクセスできると思ったのが間違いであった。
友人の助言により旅館に連絡したところ、旅館の方のご厚意により、美郷町役場前まで迎えに来てくださった。宿に着いたときに、友人が運転手の方に本来支払うべきだったタクシー代に相当するお金をチップとして渡した。このとき、心からその友人のことを尊敬すると同時に、自分だけでは何もできなかったということを実感した。そして、浜原駅にどのように戻ったかというと、旅館予約時に美郷町のタクシー会社に片っ端から連絡を入れた甲斐あって、そのうちの一つの会社の方が連絡をしてくださった。旅館に迎えに来てもらえるかを伺ったところ、大丈夫とのことだった。聞けば、三江線廃止直前、多くの人が三瓶山から浜原駅までこのタクシーを利用していたという。私のように想定外の利用者にも対応してくださった旅館の方と、タクシー会社には感謝の気持ちで一杯である。三瓶山周辺には埋没林など興味深い観光地も多くあるため、次回来るときには大田市駅からの公共交通機関を使って再びこの旅館を訪れようと思っている。
美郷町の今後
美郷町内にあった浜原駅は三江線における主要駅の一つだった。さらに、かつては江の川における舟運の拠点でもあった地域である。さらに、粕淵駅のあった粕渕は、江戸時代には石見銀山と尾道を結ぶ銀山街道の宿場町となっていった。今後は訪れる人のメインが車利用となるだろう。そうは言っても、美郷町は二つの町が合併したことで生まれ、北部と南部はそれぞれ大田市、広島県三次市とバスで結ばれている。宿場町の性質を活かした観光地として今後発展する余地はまだ残されているのだ。しかし、このままでは三次から大田市に抜ける国道375号線から美郷町に立ち寄る人はいない。沿道に公共施設が無いためだ。この現象は、かつてはカーブの続いていた旧国道のバイパスとして、旧市街地を迂回する直線ルートが建設された場合によく見られる。バイパスの沿道は大規模な施設を建設することが難しい場合も多い。しかし、粕渕の沿道には美郷町役場を建設できるほどの敷地もあり、目立たない場所に地域活動支援センターもある。公共施設を集積するには適した立地なのだ。今後美郷町は、役場への既存の公共施設の集約と観光拠点化により、気軽に立ち寄れる利便性を持たせることが急がれる。