四国新幹線と北海道新幹線の差はどこでついた?

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「四国新幹線」計画とは

 四国には二種類の新幹線計画がある。一つは徳島から高松を経由して松山に向かう四国新幹線、もう一つは岡山から瀬戸大橋を経由して高知に向かう四国縦断新幹線である。しかし、いずれも整備新幹線には含まれておらず、着工時期も未定となっている。それもそのはず、四国では隣県との結びつきが弱いという考え方が地元にもあり、予讃線の松山~高松間は、四国有数の輸送密度を誇る区間だが、松山と高松の直接の関わりは薄いとみられる。これら二都市は、都市の規模としては新幹線駅が作られるに十分なものとなっているが、東京の力を借りるには航空機との対抗を考慮する必要がある。松山~岡山間の特急の本数は比較的多く、松山から特急に乗車して岡山で新幹線に乗り継ぐという客も多く見られた。これらを考えても、岡山から瀬戸大橋を経由し、新居浜などの都市を結んで松山に向かう、「愛媛新幹線」を建設することによるメリットは大きいように思える。

四国の都市と中心駅を分析する

 ここで、新幹線の必要性について議論する前に、四国新幹線計画に関係する主要都市の基本情報を確認しておこう(人口は2015年のデータ)

①高松(42万人)
 高松は、四国最大の都市である。戦後は急激に人口が増加したが、それ以降は停滞している。瀬戸大橋開通による本四備讃線開業の影響は、丸亀市において見られた人口増のように顕著なものではない。平成17年から平成18年にかけての合併により、都市圏内の結びつきは強くなったとともに、航空貨物を取り扱っている高松空港も高松市の一部となった。明石海峡大橋開通以降により大阪とのアクセスも良くなったが、独立した都市圏を持ち続けていることに変わりはない。中心駅は琴電の瓦町駅となっている。
②松山(51万人)
 松山は、平成17年の合併以前においても人口が安定していたが、平成22年以降減少に転じる。少子高齢化の影響を受けている地域の一つと言える。どうしても高松との比較になってしまうが、松山は最低賃金が安いわりに物価はそこまで安くはない。このままでは自然な人口減少にとどまらず、人口流出も止まらないものとなってしまうだろう。中心駅は伊予鉄の松山市駅となっている。
③高知(34万人)
 高知市の人口は、平成16年以降から減少を始め、現在は2%弱のペースで減少している。しかし、卸売業や小売業の規模は決して小さくはない。高知県における人口移動のメインは、県内移動である。最低賃金と物価との関係を鑑みても高知県に住むデメリットは少ないが、あえて高知市に住むというメリットは少ないと考えられる。中心駅は、とさでん伊野線、後免線、桟橋線の交点ともなっている、はりまや橋駅となっている。
④徳島(26万人)
 徳島市の人口は平成7年をピークに減少に転じ、大阪や東京への人口流出に歯止めが効かない状態となった。明石海峡大橋が平成10年に開通したとはいえ、高松と神戸の両方から適度に距離が保たれてしまっている。中心駅は徳島駅となっている。
 以上のように、四国の県庁所在地の中ではそれぞれが異なる種類の人口減少に直面しており、課題もそれぞれであるということがわかる。

新幹線とは、地方都市への投資である

 新幹線を計画する上で重要なのは、利益を上げられるかである。もちろん、北陸新幹線が新大阪まで延伸すれば、東海道新幹線が災害によって不通となったときに代替の輸送手段となったり、福井で豪雪があったとしても完全に陸の孤島となってしまうことが無くなる。こうした「レジリエンス(不慮の事態に対する柔軟性)」は、北海道新幹線を札幌に延伸するときに、有珠山を経由するルートではなく、小樽ルートにする根拠にもなる。しかし、札幌延伸の真の目的は、札幌という都市に対する投資であり、ニセコ・倶知安・小樽への観光需要や、仙台をはじめとした東北地方各都市と札幌との新たな繋がりが生まれるのを見越してのものである。北陸新幹線は、もともと大阪との繋がりが強かった金沢に対する、成功した投資の例で、東京との新たな繋がりを生んだ(越後湯沢経由での利用客も元々多かったが)。

 どのような条件で、投資する都市を決めるべきなのか。その答えは、ミニ新幹線ではあるが、山形新幹線にある。山形新幹線は、福島から山形を経由して新庄まで行く路線である。秋田県方面への延伸が途絶えた形で新庄止まりとなったのだが、新庄市は新幹線が有ろうが無かろうが、人口減少が避けられなかった。そのため、投資という観点で言えば、山形~新庄の路線を建設したことは失敗だった、ということになる。一方で、山形はここまで人口を一定(約25万人)に保っている。つまり、大前提は、地方において顕著な人口減少社会の中でも、安定した人口が将来的に見込まれる都市であることになる。これを満たした都市こそが、札幌、金沢、長崎だった。後の2つに関しては、人口は40万人台ではあるが、福井や富山、諫早や佐賀などの中都市が周辺あるいは新幹線のルート上にありながらの40万人である。繰り返すが、都市への投資は将来性なので、人口が減らない程度の影響力を都市が持っていれば良いということになる。逆に、単独で新幹線の終着駅となるには、札幌のような200万人規模の都市であるべきということでもある。

 高知市の人口は、30万人台であり、高知県全体で見ても76万人である。単独で新幹線の終着駅になる条件を満たさない。徳島県も79万人であり、同様である。松山は西条市や新居浜市、新幹線ルートにはならないが今治市の存在がその影響力を裏付けているし、高松には付近に、香川県第二の都市である丸亀市がある。宇多津町とともに、人口が安定している都市の一つである。とは言え、時間短縮効果が低いため、高松駅を終着とするのでは不十分である。宇多津駅に新幹線駅を作り、高松への連絡列車(「たかまつライナー」みたいな)に接続させるのが良いだろう。そして、香川・愛媛の両県に2駅ずつとして、観音寺・伊予西条・松山と停車していくことになると思われる。

実現可能性は?

 いずれにせよ、北海道新幹線、北陸新幹線、リニア中央新幹線、長崎新幹線の整備が終わってから議論が進むことになるだろう。大分・宮崎を結ぶ東九州新幹線の計画もあるが、都市の影響力や、大都市へのアクセスという面で、付近に別府市があり、北九州や福岡へのアクセスがもともと良い大分市は強力なライバルとなることが予想される。豊後水道にトンネルを通すという案もあることにはあるのだが、実現に向けては、双方の協力も必要となってくるだろう。また、青函トンネル並みの大事業となるので、100年先の日本に見合った事業となるかどうかも議論されるべきである。現時点では、大分新幹線か、松山新幹線のいずれか一方でも実現すれば、それなりの結果は見込まれるだろう。しかし、大分、松山はいずれも、将来的に転出や人口減少が見込まれる地域だ。今から新幹線誘致に向けた活動を継続し、地域の価値をアピールしていくのか、それは自治体次第である。

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