一週間西日本紀行【5日目】若戸渡船と秋芳洞観光

一週間西日本紀行【5日目】若戸渡船と秋芳洞観光 2019/09 一週間西日本紀行

 延岡のホテルにて、起床したのは午前5時。前日までの疲れもとれ…とはいかないが、いずれにせよ、今日中に九州を出るという計画である以上は、今出発しないとならない。というのも、日豊本線を使って宮崎県延岡市から、大分県佐伯市へと抜ける「普通列車」は、朝に一本、夜に一本、一日に二本しかないからだ。ちなみに、逆方向は、朝の一本だけである。朝は普通列車同士が途中駅で交換する。

延岡駅。「マインクラフト」で作れそうな建物だ
誰にも見られない名所案内を見ると、「全駅制覇」したくなるものだ
見えにくいが、「宗太郎駅」

 「普通列車」は、787系の前1両のみを使用して運行される。主な乗客は、地元の高校生だ。その割にはしきりに検札が来る。もちろん一度見た乗客のところには再び来ることはないのだが、乗務員も大した記憶力だと思う。そして、私が乗った上り佐伯行き普通列車は、佐伯で一旦乗客をすべて降ろした後、特急博多行となる。

かつては宿毛との間にフェリーが出ていた。現在は運航休止中である

 佐伯駅で私は普通列車に乗り換える。延岡から佐伯までの区間は「宗太郎越え」と呼ばれる難所なのだが、特急であれば一日に何本もあるため、越えるのは容易だ。しかし、青春18きっぷを利用した旅である以上、特急料金だけでなく乗車券の料金もかかってくるため、2000円以上の出費は確実となる。それを避けるために、延岡に宿泊したのだった。ちなみに、宿泊した「アパホテル」は、5000円以下で泊まることができた。しかも、合計5万円を利用した会員に5000円のキャッシュバックがされるのだが、それがタイミングよく可能だったため、実質無料で宿泊することができた。

 佐伯を出ると、海崎(かいざき)、狩生(かりゅう)、と停まっていく。「Relife(リライフ)」というアニメ化された漫画では、大分がいわゆる聖地となっており、登場人物の苗字が日豊本線の駅名だったりするのだ。2016年夏に1クール放送された後、2018年に「完結編」として、4話分が収録されたBlu-ray/DVDが出ている。リアルタイムで視聴していた頃は私は高校生、登場人物と同年代(?)だったが、今になって完結編含め見返すと、沁みるものがある。

 さて、佐伯から乗った普通列車は、中津行であった。大分駅でどれくらい人が乗ってくるのかに興味があったが、さすがに宮崎駅ほど少なくはなかった。人が多く乗ってきたのは、やはり別府だった。この時点で席が埋まった。そして、列車は大分県最北の駅、中津駅へと入っていく。ここから小倉へ向かう列車の本数は、今までとは比べ物にならないほど多い。中津駅の食堂で唐揚げ定食を食べた後、北九州へと向かう列車に乗り継いだ。中津は唐揚げで有名な街だ。

朝食兼昼食。

 惰性で小倉まで乗ってしまった。西小倉で降りれば鹿児島本線下り列車にうまく乗り継ぐことができたのだが、本数が多いので一本くらい見送っても良いと考えた。小倉から戸畑まで、短い区間ではあるが着席して乗車したい気持ちも後押しした。

新旧の交通を一枚に収めることができる。

 戸畑駅に着くと、2日目に見た若戸大橋がやはり映えていた。ここから向かうのは、若戸大橋が開通する前から人や自転車を運んでいた若戸渡船だ。現在若戸大橋も歩いて渡ることができるが、徒歩客が主に、まだ船を利用しているという状況だ。こちらは戸畑区で、対岸は若松区となっているが、若松区から北九州の中心地である小倉まで、船も橋も使わないで行くとなると、かつて内陸部の石炭を、沿岸の製鉄所に運んだ筑豊本線を使って八幡西区の折尾駅まで行き、そこから鹿児島本線を使って大きく迂回しなければならない。今回私が若松に行く理由は、若戸渡船がいかに時間短縮に役に立っているかを実感するためでもあった。

若松から戸畑方面を望む

 若松側には古い建物が多く残っている。大分麦焼酎「二階堂」のCMのロケ地になったものもあるようだ。そして、若松駅周辺は、公園になっていた。先ほど出てきた、石炭を運ぶ列車は、ここ若松駅で積み出され、海外へも輸出されたという。今ではその役割を終えて、大規模な積み出し施設は過去のものとなっているが、今でも日本の石炭は質の高いものとして世界シェアの一部を担っている。その原点ともいえる場所が、北九州と言えるだろう。

床がQRコード風になっている。
筑豊本線。折尾~若松間は電池で動いている
九州にしばしの別れを告げる。

 折尾駅からは、鹿児島本線門司駅を経由して、山陽本線小月駅へと足を進めた。この時点で15時、秋芳洞の入洞終了時間は17時半だから、少し不安にもなった。下関駅から美祢駅までのバスには小月駅で乗車することもできる。下関駅で乗車するには間に合わなかったが、山陽本線の方が当然速いため、追い越した形だ。美祢駅からは秋芳洞行きのバスに200円で乗車できるが、17時15分着の実質最終バスに乗り継ぐことができた。秋芳洞には、修学旅行のときに一回来ており、他の人に「一生に一度は行ったほうがいい」と薦めるほどに観光する価値のあるスポットだと当時から思っていた。今回は、防府のネットカフェに宿泊する都合上、18時20分発、山口駅行きの最終バスに乗車する必要があったため、秋吉台まで行く時間が無かったが、ぜひ秋芳洞とセットで訪れてほしい。そして、私のおすすめは、秋吉台を見た後、秋芳洞にエレベーターもしくは黒谷入口から直接入り、正面入り口から出るルートで観光することである。特に初めて訪れる人は、「正面入り口以外の入り口から入る」ことに気を付けてほしい。

流れ出た川は厚東川に合流し、宇部市で瀬戸内海に注ぐ。

 一般的には、秋芳洞は格好のデートスポットである。私のように一人で入っていった人は、17時台とは言え皆無であった。また、平日で閉洞間際の時間であったため、他の観光客の気配が無いときの心細さは半端ではなかった。ぜひ皆さんも一度、閑散期に一人で秋芳洞を訪れてみてほしい。

 バスに乗って山口市街地へとやってきた。湯田温泉の油そば屋には、昨年の山陰本線迂回貨物撮影の際に訪れていることから、今回はそこで夕食をとることにした。油そばというのは都会特有の食べ物であると私は考えているから、旅先で食べる油そばには、ある種の懐かしさ、そして安心感を覚える。湯田温泉駅から山口線、山陽本線を乗り継いで、本日の最終目的地の防府駅に着いた。快活クラブまでは徒歩10分ほどだっただろうか。鍵付き個室には、今回の旅で本当にお世話になった。今後も積極的に利用していきたい。

 そして、翌日からは、東京へ帰るだけである。一週間という時間制限のもとで旅をしてきたが、残り2日弱で山口県から東京へと戻ればいいということで、乗りつぶしをするなり、観光するなり、自由に過ごしつつ東京へと戻ることになった。つまりこの時点で明日ネットカフェを出る時間をどうするかすらも決めていなかった。明日がどこまで充実したものになるかは、起床時間次第である。疲れとともに、目覚ましもかけずに、眠りについた。

一週間西日本紀行【6日目】山陽路を東へ
一週間西日本紀行【6日目】山陽路を東へ
 防府の快活クラブを出たのは10時頃だった。もし7時頃に起きることができていれば、岩国に立ち寄って錦帯橋を観光していたところだったが、これでは本日の目的地である京都への鉄道に乗るだけとなってしまう。とは言え、途中で岡山から津山へと寄り道...
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