ICカードで「大回り」する際の注意点についてまとめてみた

ICカードで「大回り」する際の注意点についてまとめてみた 旅行

ICカードで「大回り」できる根拠

 まずは、大都市近郊区間における選択乗車(一般的な大回り)について復習しておこう。旅客営業規則第二編第四章第二節における第157条の2は以下により定められている。

  大都市近郊区間内相互発着の普通乗車券及び普通回数乗車券(併用となるものを含む。)を所持する旅客は、その区間内においては、その乗車券の券面に表示された経路にかかわらず、同区間内の他の経路を選択して乗車することができる。

 普通乗車券については、発駅と着駅が記されたマルス発行の乗車券でも良いし、金額式片道乗車券と呼ばれる、普通の切符も含まれる。つまり、切符を使って大回りできる根拠になっている。一方で、SuicaやPasmoにはこの「選択乗車」という制度はない。

 というのも、乗車券によりA駅からB駅まで乗車できるという契約は切符を購入した瞬間に成立する一方で、SuicaやPasmoなどICカードでは、 JR東日本ICカード乗車券取扱規則の第二編により、 入場時にその駅を発駅とする乗車が可能となる契約が成立し、環状線一周の経路や重複経路が含まれない「片道乗車」によって到着した着駅においてIC運賃が引かれるというシステムになっている。つまり、不正な手段での乗車でない限り着駅までの、しかも同じ会社を通ってきたと仮定したときの最短経路で計算されるということになる。これはSuica・Pasmoエリアと呼ばれる、東京近郊区間およびPasmoが導入された私鉄の区間を加えたエリアにおいて、中間改札なしに異なる会社線に乗車できる場合(直通列車)においても成立する。もちろん八丁畷(JR・京急)や小川町(JR・東武)のように簡易改札を通過する場合は、ICカードをタッチしないと違法となる。これは、中間改札を通る場合はそこまでの最短経路で計算された料金を引かれなければならないためである。

 つまり、乗車券による選択乗車を根拠とした大回り乗車に対して、ICカードによる乗車で不正乗車をしていない限り運賃が最短経路で計算されるのは当然のこととなる。そのため、

改札で時間制限により止められた場合、駅員に「大回りで来た」と言うべきではない。乗車券による大回りで止められたときに経路を確認されるケースと同様に、通ってきた経路を駅員に示して不正乗車が無かったことを証明した上で最短経路による運賃を引いてもらおう。

「大回り」中に出場するとき

 入場した時点で契約が結ばれるという点から分かるように、どの経路の運賃が引かれるかを判断するのは出場時もしくは中間改札を通過したときである。そのため、Suica・Pasmoによる遠回りの経路で乗車中に、途中駅で下車することも可能である。その際は当然、下車した駅までの最短経路で運賃計算が行われる。

 一方で、乗車券では途中で下車した際は、そこまでに実際に乗車した経路の運賃で計算される。もっともそれを確認する手段は自己申告となるのだが。その代わりと言うべきか、乗車券での大回り中には振替輸送が認められる。これは契約時点で確定している着駅までの輸送を保証するという意味である。ICカードの場合は着駅が確定していないため、このような措置は認められていない。

Suica・Pasmoでは「大回り」中にどこの駅で下車したとしても不正乗車にはあたらないため、任意の駅で下車してよい。輸送障害が起こった際は振替輸送の対象外なので、なるべく発駅に近い駅を(重複経路が出ないように)目指そう

最長大回りについて

 これについては、ご存知の方も多いと思われるので、念のため確認しておきたい。乗車券においては、第155条「継続乗車」において、入場後に利用期間を過ぎても途中下車をしなければ着駅までの乗車を継続してよいという規則がある。そのため、年越しの終夜運転を利用して、大回りを継続できる。これを利用すると、北小金から馬橋までの1035.4㎞の大回りが可能となる。

 一方、ICカードにおいては、有効期間が始発~終電までとなっている。終夜運転が行われる際にはその途中で終電と始発が切り替わるという扱いになる(小田急など)とみられており、終夜運転をまたいで使用する最長大回りは不可能となる。

ICカードでの最長距離は、900km前後である。2019年12月に実施したものの記録を以下のリンクに示しておくが、現在は接続の関係でうまくいかない。

1日でできる大回りの限界に挑戦してみた【900km】
1日でできる大回りの限界に挑戦してみた【900km】
年越し大回りは1035.4km、それ以外の日は… 東京近郊区間内で完結する区間の乗車券は、基本的に有効期限は1日であるが、大晦日の夜に終夜運転が行われる際には、大晦日に使った乗車券を元日まで継続して使うことができる。これにより、東京近郊区...

特急について

 乗車券による大回り中には、別途特急券を買うことによって特急への乗車が可能であるが、検札の際に大回り中である旨を伝えることになる可能性はある。Suica・Pasmoによる「大回り」中は、ICカードを乗車券の代わりとして使える特急かつ、JR東日本内で運転が完結する特急を利用することができる。そのため、もともとICカードが使用できない東武日光線直通の特急や、伊豆箱根鉄道や伊豆急に直通する踊り子、サンライズ出雲に乗車することはできない(要出典)。もっとも、あずさ、あかぎ、ときわ、わかしおなどの特急ではICカードを乗車券として使っている乗客も多いため、基本的に特急券のみを見せれば良い場合が多いことに変わりはないが、ICカードの契約の性質上、大回り中であるという説明の手間を正当に省くことができるだろう。

まとめ:乗車券による大回り(選択乗車)とICカードによる「大回り」は混同されやすい

 Suica・Pasmoによる「大回り」が可能な区間には東京近郊区間が含まれているのは確かである。そのため、乗車券による大回りでJR線直通列車により他社線に乗車できないという制限があるため、ICカードでも同様であると勘違いされやすい部分がある。ICカードによる「大回り」は、Suica・Pasmoエリアと呼ばれる、東京近郊区間およびPasmoが導入されている会社線(私鉄)を加えた区間において可能であるということを覚えておきたい。当然、そのエリアを出るような経路による乗車は不正乗車となる(秩父鉄道など)。

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