「子どもにお金をかける」ことの意味

 大学二年の教授と申します。私は、大学受験向けの塾に中学から高校にかけて6年間通ってきましたが、第一志望には受からず、今通っている大学に入学しました。塾では途中から成績が伸び悩み、休む日も出てきました。そんな中、私は親に、「あなたには、お金をかけて塾に通わせてあげてるんだ」(細かくは覚えていないがこんなニュアンス)と何度か言われたことがあります。この記事では、この発言にスポットライトを当てて、「子どもにお金をかける」とは、どのような考え方が背景にあるのかを考えていこうと思います。

子どもへの「投資」

 先ほどの、「お金をかけて塾に通わせてる」というのは、子どもに対する投資という考え方が背景にあります。投資なので、掛けたお金に対するリターンは様々です。ここでは、塾と子どもとの相性によって、また、子どもの意思によっても異なってくるでしょう。基本的に、投資においては最善の場合を考えて期待するようなことはしないと思います。最悪の場合を考えて、それを一つ一つ潰していくということをします。とはいえ、子育ての場合はどうしても期待してしまうんですよね。「お金をかければそれ相応の見返りがあるはずだ」と。しかし、このような考え方は禁忌と言えるでしょう。何がいけないのかと言うと、子どもに対する投資がお金「だけ」という点です。子どもに投資したお金に対するリターンが実際にいつ現れるかというと、子どもが就職して以降、つまり親と子としての関係がひと段落して以降になります。そうなると、子どもに対するお金の面での投資は、「返ってこないもの」、「リターン0」と考えるのが自然です。中学受験、高校受験などの対策にお金を掛けて、いい学校に入った、というその事実は、お金を掛けたことに対するリターンかもしれませんが、「子どもが良い学校に入学した」という事実も、また投資の一つであることを忘れてはいけません。投資をして、得たお金でまた投資をしている、という、あくまでも投資の途中の段階と言えるでしょう。いい学校に子どもが入って、その先は子どもの意思を尊重しようというのは良いのですが、親として、新たに大学受験という投資を始める際には慎重にならねばなりません。これは二重の投資にあたり、子どもの「親に信用されてない」という思いを増長させる危険性があります。理想を言えば、子どもが「将来のために」大学受験で良い大学に入るという考えを持った上で、親に塾に通わせてもらうというのが理想です。大学受験の動機というのは、「周りの雰囲気に流されて」だとか、「大学受験率が高い学校に通っているから」とかでも良いのですが、決してその一つに「親が言ったから」が紛れ込んでこないようにしてください。

「子どもへの投資」は「不信感」と紙一重

 投資は一般的には、「信頼」がもとにあります。何にたいする信頼かと言えば、「お金をかけたらその分の利益が返ってくる可能性がある」ということです。子育てにおいても、その考え方は確かに成り立ちます。しかし、二重にも三重にも投資していいのは、株や不動産などだけで十分です。子どもには二重に投資するべきではありません。二重に投資するということは、リスク回避のためであって、信頼しているとは言え、不確定要因に対する一定の不信感があるということの現れです。どうしても不安で二重に投資したい、というのであれば、1つ目はお金で投資して、2つ目、3つ目は心の投資として、人間関係のレベルでの期待に留めてあげてください。

まとめ: 子どもへの投資は、1つで必要十分

 子どもにお金をかけて、将来に向けた投資をするという考え方は重要であり、1つ子どもの何に投資するかを決めるのは大切です。しかし、2つ目も親が決めるのは余計で、子どもの自尊心、自己肯定感を下げることに繋がります。2つ目以降は、子どもに対して一人の人間として接してあげることが重要で、その人間関係を通して、子どもが自己投資するように促してやるのが良いかと思います。そして、子どもが自己投資すると決めたらそれを尊重し、金銭面でサポートする、というのが親の役割です。

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