前日は、ついつい本を読んでしまい、夜更かししてしまった。睡眠時間が6時間を下回ると、列車の中で寝てしまうのが常である。個人的に寝心地が最も良いと感じる列車の一つが、「キハ110」である。深緑色をしている、冷涼な地域では良く見る車両だ。新潟を出発し、白新線で新発田へと着くと、そこからは長大な日本海縦貫線の一部をなす羽越本線へと入る。新津から来た列車こそが、そのキハ110だった。これは寝そうだな、と思った。しかし、この先、村上駅を過ぎると待っているのは、日本海の景観である。夜に羽越本線に乗車したとき以外は、必ず、村上駅で海側の席に移動し、海を眺めたものだ。
村上駅に到着したとき、「桑川から越後寒川にかけて大雨が降ったため、ここで運転を見合わせます」というアナウンスが入った。これは、酒田駅で乗る予定だった秋田行への接続がとれないことを意味する。そうすると自動的に、弘前駅で乗る予定だったリゾートしらかみにも乗車できないことになる。五所川原まで行って津軽鉄道に乗る予定だったが、本日中に函館に到着するという目的を達成するには、乗っている時間はない。そのため、村上駅のみどりの窓口で払い戻しをしてもらった。事故見合わせとのことで、全額返ってきた。
2018年9月に秋田に行ったときも、笹川流れ付近で、大雨による速度制限がかかったため、列車が大幅に遅れたことがあった。そのときは秋田を夜に出発する高速バスに間に合えばよかったため、そこまであわてなかったが、今回は目的地が函館であることから、長引くようであれば、米坂線、奥羽本線を経由して迂回するという選択肢も考えた。
程なくして、車掌が客一人ひとりに目的地を訊き始めた。由利本荘などを目的地にしている人もいた。酒田で秋田行に乗り継げないと、12時29分発まで待たなくてはならなくなる。ただ、後続にいなほ1号があるため、乗せてもらえる可能性はある。しかし、私のように北東パスで来ている人や、18きっぱーは、振り替え輸送に期待してはならない。ましてや、羽越本線という「よく止まる」路線を通ってその日のうちに北海道に行こうとしていること自体、想定外に近い乗り方なのだから、酒田12時29分発に乗り継げればいい、という気持ちでいた。
40分ほど経って、8時半に桑川まで動くとの放送があった。そして、桑川で再び運転を見合わせ、点検が終了次第、制限速度を下げて運転を再開するとのことだ。思ったより早くて良かった。12時29分までには酒田に着きそうだ。
そして、桑川を発車する際に、酒田より先に行く客は、あつみ温泉駅で、乗車券だけでいなほ1号に乗れるというアナウンスがあった。青春18きっぷでも同様という。確かに、特急券の検札は各駅でやっているから、自動改札の置いてある村上を過ぎてしまえば、いなほ車内での検札は省ける。私があつみ温泉から乗車した後は、検札などもなく、快適に秋田駅への旅を楽しめた。北東パスユーザーとしては、ご厚意に感謝である。
そういえば、4年前のきょう、8月9日は、府屋駅から青森駅まで移動して、そこから急行はまなすに乗車した。そして、翌8月10日に、人生初の渡道を果たした。なんという偶然。鉄道だけで渡道するにあたって、新潟に一回泊まると結構スケジュールに余裕が出るから良い。
秋田駅の改札前にも、取材している地元局の方がいた。そして、新青森駅の改札前には、おそらく混雑する新幹線の様子を撮っているカメラマンがいた。今回の旅のスケジュールは、お盆休みに被せる形となったが、その混雑をいかに避けるか、これは4年間の乗り鉄で培ったスキルが試される。
そして、新幹線で渡道を果たした。4年前ほどの新鮮さは無いものの、鉄道での旅における渡道は、やはりそれなりの感動があるものだ。
青函トンネルでは、JR東日本のフリーWi-Fiが使える。コンセントも1席に一つあるので、実に快適な作業環境だった。
はこだてライナーを乗り継いで、函館に着いた。いかんせん荷物が重いので、ホテルにチェックインしてから、函館山行きのバスに乗った。
何より、自分のカメラで世界三大夜景を収められただけでも十分である。あれ、最近は札幌にその座を奪われた…いや、それは日本三大夜景か。もはやわからん。
深夜の函館に繰り出すと、台風8号の名残で、強風と雨がセットで押し寄せてきた。ここから北海道はしばらく涼しくなるという。関東は相変わらずらしい。どうやらこの旅行は、「避暑旅行」になりそうだ。