構造地質学各論【火山の仕組み】

はじめに

火山は地球惑星科学における各分野から研究が進んでいるとともに、プレート収束境界における火山か、拡大境界における火山か、といった違いをはじめ、火山の形態や噴出する溶岩、マグマの上昇機構には多様性があります。そのため、個々の火山に関する知識を増やすだけでなく、岩石学や構造地質学、地球物理学の観点から一般的なモデルとして捉える視点を持つ必要があります。これまで「構造地質学の基礎」や「構造地質学各論」で学習した内容を復習しながら火山をとらえていきます。

マグマ供給システム

マグマ供給システムは、マントル最上部で岩石の融解により発生したマグマが、地殻内において浮力などによる輸送、地殻物質の融解、組成変化を受けることで地表付近まで移動する仕組みのことを言います。これを理解することで、各プレート境界において火山が発生する仕組みが分かります。

マグマの輸送機構

地殻物質の融解により生じたマグマは、一般的にその高さでは周囲の固相よりも密度が低いため上昇し、周囲の地殻と密度が等しくなる高さまで輸送されます。この高さを浮力の中立点といい、その部分にマグマ溜まりが形成されます。この原理より、珪長質マグマは玄武岩質マグマよりも浅部にマグマ溜まりを形成することが多く、地表に噴出する確率が高いと言えます。

マグマ溜まりを形成してから地表に噴出するためには、H2Oを中心とした揮発性成分(ガスとも呼ばれる)が飽和し、発泡することで浮力を得ることが重要であると考えられます。一方、浮力の中立点の下部における輸送機構は、岩脈ストーピング部分帯融解ダイアピルが考えられます。

岩脈・岩床

マグマが輸送される地殻は、その部分に加わっている応力によって異なる方向に割れ目を生じます。最小応力の方向が垂直方向の場合は垂直方向の密度変化が小さいため、マグマが垂直方向に移動しにくく、水平方向の移動により岩床を形成します。

一方、最小応力の方向が水平方向の場合は垂直方向の密度変化が大きいため、マグマが垂直方向に移動することで岩脈を形成します。

方向による応力の差が小さい場合、マグマの移動方向に対して垂直な断面方向に生じるマグマ圧により、放射状岩脈が発達します。さらに、断面方向のマグマ圧が岩脈における最小応力に比べて十分大きい場合は岩脈同士が連結しやすくなります。

このような岩脈の形成・連結は、横ずれ断層や正断層が形成されるような応力場において起こりやすく、連結によって形成された岩脈は安定した火道となることで、その直上に複成火山を形成し、周辺に多数の岩脈が形成されることから、寄生火山を形成します。一方、逆断層が形成されるような、水平方向の圧縮応力が大きい応力場では、岩脈は不安定かつ多数になるため、異なる火道を通って噴火をすることで、独立単成火山群を形成しやすいことがいえます。

ただし、ある程度の規模をもつ多くの火山では自重により局所的に引張応力場が形成されるため複成火山の形をとり、その中でも正断層が形成されるような引張応力の大きい応力場において、寄生火山が発達することで、単成火山群のような形をとることが実際には多くなっています。そのため、個々の火山の形態が必ずしも広域の応力場を示すとは限らないことに注意する必要があります。

ストーピング

マグマ溜まりの天井部分の岩石が加熱されることで熱膨張し、破壊されることでその岩石はマグマ溜まりを沈降するため、それを繰り返すことによってマグマ溜まりが上昇することをストーピングといいます。破砕された岩石片の大きさにより、小さいものはピースミルストーピング、数百メートルから数kmの大きさのものをブロックストーピングまたは地下コールドロンと呼びます。

部分帯融解

ストーピングによりマグマ溜まりの天井部が部分融解すると、マグマの熱の一部が融解熱に使われることで冷却され、対流によって下降します。このようにして下降したマグマは、圧力が増大していくとともに融点が下がるため、固化することでその凝固熱により、マグマ溜まり下部のマグマは熱せられます。加熱されたマグマは対流によって上昇することで、再び天井部の部分融解をもたらします。

また、この作用によりマグマは天井部の岩石を取り込むことによる同化作用と、固化することで結晶中に物質が選択的に濃集することによる結晶分化作用が同時に起こります。これを部分帯融解といいます。ストーピングと部分帯融解によるマグマ溜まりの上昇は、マグマの熱エネルギーが位置エネルギーに変換されていると捉えられます。

ダイアピル

粘性が比較的近い液体が、上部が高密度、下部が低密度になった状態では、その境界部に凹凸面が形成され、低密度層がきのこ雲状に成長して上昇することがあります。この現象をダイアピルといい、上部に砂岩、下部に岩塩が分布することで形成される岩塩ドームなどがその例に挙げられます。マグマ溜まりについても、天井部の岩石は高密度、マグマは低密度という関係になっており、ダイアピルを形成する条件に当てはまります。

ダイアピルの上部の粘性が、下部に比べて十分大きい場合は、球状の頭部と細い柱状の尾部を形成して上昇します。そのため、マグマにより形成されたダイアピルは、岩石を多く含んだ頭部が、岩石に乏しい尾部に持ち上げられるような形で上昇することが予想されます。一方、ダイアピルの上昇速度は、ダイアピルの大きさ(直径)、上部と下部の密度差、周囲の岩石の粘性の低さに依存します。周囲の岩石の粘性は、地温勾配が大きいほど小さくなります。このような地温勾配と上昇速度の関係から、一度ダイアピルが上昇した火道は熱せられることで地温勾配が上昇するため、次のダイアピルの上昇速度はさらに大きくなることが言えます。

メルトの移動

前項では、岩石の部分融解度が35%-50%の臨界メルト量を超え、流体としての性質を持つマグマの輸送機構を見てきましたが、この項では部分融解度が臨界メルト量以下で、固相の岩石が多くを占め、その間を液相のメルトが充填している状態で、どのようにメルトが移動するかを見ていきます。

圧密・膨張・収縮

圧密は、深度に応じた岩石の圧力により、メルトなどの流体が下部に移動する作用のことを指します。メルトの粘性が低い方が移動速度は速くなりますが、その場合でも1cmの移動・集積には1万年かかり、非常に遅い速度です。

また、一般的な地殻物質の融解によりH2Oがメルトに移動するためメルトの密度が相対的に小さくなることで、膨張します。一方、間隙に含まれるH2Oと地殻物質の反応による融解では、H2Oがメルトに含まれることで密度が上昇するため、収縮します。このような膨張・収縮によるメルトの移動も考えられますが、圧密と同様に非常に遅い速度です。

フィルタープレッシング

部分融解したメルトのうち、粘性に差がある層が共存している場合、応力を受けた場合に粘性の低い層ほどひずみ速度が大きく、粘性の高い層ほどひずみ速度が小さくなります。この差により、粘性の低い層から粘性の高い層へのメルトの移動が起こることをフィルタープレッシングといいます。この作用による1cmの移動・集積には数十年程度を要することから、圧密、膨張・収縮によるメルトの集積に比べて効率が良いことが分かります。

クラック

部分融解により含水鉱物からH2Oがメルトに移動した場合、周囲の岩石に比べて密度が小さいことから膨張することは先ほど確認しました。この膨張により、岩石を破壊し、開口を生じるのに十分な引張応力が形成されるため、クラックが生じることがあります。部分融解度が大きいほど膨張率が大きいため、クラックは部分融解の進行に伴って成長します。

初期における1cmのクラックの成長には数十年かかりますが、メルトの集積が進むにつれてその速度は次第に速くなり、最終的にはクラック同士の連結により岩脈と呼ばれるまでに成長します。

結晶・微量成分の移動

メルトから結晶が晶出することでメルトの組成は変化します(結晶分化作用)。主要な組成については相平衡図にしたがって変化しますが、微量成分は結晶とメルトの分配係数に応じて変化します。

また、マグマに含まれる微量成分に比べて、地殻に含まれる微量成分が十分に多い場合は、マグマが地殻物質を取り込む同化作用により、単に結晶分化作用を受けた場合よりもマグマへの微量成分の濃集が進行することがあります。この場合、同化作用とともに結晶分化作用も同時に受けていることが多く、同化分別結晶作用と呼ばれます。

結晶沈降

マグマは一定の応力までは固体のようにふるまい、一定の応力を超えるとニュートン流体としてふるまう、ビンガム流体の性質を持つため、結晶が小さい場合は沈降せず、大きく成長することで沈降します(結晶沈降)。これにより結晶が取り去られた部分で再びマグマの結晶分化作用が進行しますが、沈降速度は粘性が大きいほど遅くなるため、一般的に粘性の大きいマグマ中ではこの作用は結晶分化作用の進行への貢献が少ないと考えられます。

流動分化作用

マグマ溜まり内において比較的粘性の大きいマグマの流れが存在する場合、壁際では剪断応力が大きく、内側では剪断応力が小さくなります。この差により結晶は壁際から内部に押し出されることで濃集し、結晶が取り去られた壁際で再び結晶分化作用が進行します。このような作用を流動分化作用といいます。

クリスタルマッシュ

以上の作用が進行すると、マグマ溜まりの下部は冷却するとともに結晶量が増大するため、臨界メルト量を下回ることで固体としてふるまうクリスタルマッシュを形成します。この場合は上部からの圧力により圧密やフィルタープレッシングが起こることで、残存するメルトが絞り出されていき、やがて固結します。

マグマ混合

結晶分化作用や同化作用により形成された珪長質マグマは、マントルカンラン岩の部分融解により形成された玄武岩質マグマと、狭い火道内でマグマ混合を起こすことがあります。このようなマグマ混合の証拠として、カンラン石と石英のように非平衡な(共生しない)鉱物の組み合わせや、鉱物の外側に高温相が見られる逆累帯構造などが挙げられます。

マグマ供給システムの具体例

プレート拡大境界

大西洋中央海嶺や、東太平洋海嶺のようなプレート拡大境界では、深さ3km付近で浮力の中立点に達し、玄武岩質のマグマ溜まりを形成します。マグマの供給は断続的であるため、結晶分化が進んでメルトの割合が高い部分はマグマ溜まりの上部に限られ、下部はクリスタルマッシュとなっています。また、マグマが供給される部分から離れるにつれて冷却していくため、結晶の割合は増加していき、最終的にはハンレイ岩となります。また、プレート拡大境界は水平方向の圧縮応力が小さいため、マグマ溜まりの上部には岩脈が発達し、分化の進んだマグマが岩脈を通って地表に噴出することで枕状溶岩を海洋地殻の最上部に形成します。また、岩脈内には玄武岩に比べて結晶の割合が多い岩石が残り、それらは輝緑岩または粗粒玄武岩と呼ばれ、海洋地殻の一部を構成します。

大西洋中央海嶺では、プレートの沈み込みがないため低速拡大部となっています。このような場合はマグマの供給量が少ないため、マグマ溜まりは小規模な岩脈状となり、リフトバレーを形成します。一方、東太平洋海嶺では、プレートの沈み込みが原動力となって高速拡大部となっています。このような場合はマグマの供給量が多いため、マグマ溜まりは横に幅広く拡大して岩床状になり、海洋地殻の上部を持ち上げることで隆起地形を形成します。そのため、東太平洋海膨とも呼ばれます。

ホットスポット

ホットスポットでは、マントルプルームの上昇により深さ数十kmでマグマを発生し、深さ数kmで浮力の中立点に達するまでに大規模な岩脈状のマグマ溜まりを形成します。マグマの供給量が少ない場合は中心部の火道のみが使われて楯状火山体の内部に輸送されますが、供給量が大きい場合は、楯状火山体の自重により形成された岩脈群も使用されてマグマが地表付近に輸送されます。

キラウエアのように大規模な楯状火山内部では岩脈群が発達しているため、浮力の中立点に達した玄武岩質マグマ溜まりは、一部のマグマを地表に噴出させるとともに、残りのマグマは岩脈群を通して水平移動します。これにより、マグマ溜まりに質量欠損が生じることで山頂には陥没カルデラが形成されます。発達した岩脈群により強度が小さいことも要因といえます。

プレート収束境界

プレート収束境界では、含水玄武岩の部分融解や、海嶺の沈み込みあるいは背弧海盆の拡大によりウェッジマントル(プレートの沈み込む上部に上昇してくる補償流)が高温になることによる堆積岩の部分融解などにより安山岩質マグマや珪長質マグマが供給されることが多くなっています。また、珪長質マグマと玄武岩質マグマの混合により安山岩質マグマとなることもあります。

日光火山などの東北日本弧の火山は、逆断層が発達する圧縮場にあるため、岩床が発達します。一方、桜島をもつ鹿児島湾や阿蘇山は引張応力場に位置し、岩脈が発達します。珪長質マグマにより形成された岩脈はカルデラ内部に位置しており、爆発的な噴火をもたらします。また、その周辺には玄武岩質マグマにより形成された岩脈も存在し、カルデラ内部またはカルデラ縁において珪長質マグマと混合することで、比較的穏やかではあるが活発な火山活動をもたらします。さらに、玄武岩質マグマにより定常的に熱が供給されることで、珪長質マグマは固化せずに共存していると考えられます。

火山の分析

火山の定性的分析

複成火山や単成火山、といった個々の火山の形態が広域の応力場を示すとは限らないことは前述した通りですが、実際の火山を見ると、寄生火山が一定の方向に配列しているなど、火口の分布や岩脈の方向を分析することで、その火山を取り巻く応力場の推定ができます。以下では日本における有名な火山の火口の分布や噴火の歴史を見ていくことで、これまで学習した火山における現象が、実際にはどのような形態をとるのかを学習していきます。

日本のおもな火山
富士山

富士山は、10万年近くの間同じ火口から玄武岩質の溶岩およびスコリアを噴出し続けたことで、数十立方kmにおよぶ山頂付近の地形を形成しました。数十万年前の、いわゆる古富士火山の活動も含めると噴出量は数百立方kmにおよび、それが実際の山体の体積に近くなっています。広大な裾野は、山頂付近が急斜面であることにより侵食され、それらが堆積したことで形成されました。このような複成火山では、溶岩と火砕物(富士山の場合はスコリアが多い)が交互に堆積して山体を形成することから、成層火山とも呼ばれます。

富士山には中央火口のほかに、宝永火口をはじめとした小火口およびスコリア丘が、北西-南東方向に分布しています。それぞれの火口は単成火山であることが多く、寄生火山とも呼ばれます。このような寄生火山の分布は、フィリピン海プレートの沈み込みの方向が南東から北西に向けて起こっていることに対応しています。プレートの沈み込みによりその方向に圧縮応力場が形成されるとともに、山体の自重により垂直方向にも圧縮応力場が形成されていることから、最小応力の方向は、北東-南西方向であると考えられます。岩脈は最小応力の方向に対して垂直な面に形成されやすいことが言えるので、このような寄生火山の分布になっていることがわかります。また、それに対応して富士山の山体の形は、北西-南東方向に長辺を持つ楕円錐のようになっています。

北西‐南東方向に伸びた富士山

足柄峠(富士山の東側)から見た富士山

阿蘇

阿蘇カルデラは、8万年前に起こった噴火により形成され、数百立方kmのマグマを噴出しました。カルデラは大量のマグマを噴出した結果、マグマ溜まり内部が空洞化することによる陥没により形成されます。そのため、カルデラ内部の体積は噴出したマグマの体積に比較的近いことが言えます。

カルデラは一般的には、通常の火口に比べて大きい陥没地形のことをいい、直径が数kmに達するものを指します。そのため、カルデラを形成するような火山はマグマの噴出量が多く、山体の体積は100立方kmを越えます。阿蘇のように破局噴火とも呼ばれる大規模なカルデラ噴火を起こした場合は、火山から離れた地域にも火砕流や溶結凝灰岩といった形で噴出したマグマが散らばることから、実際の噴出量は山体の体積に比べて数倍大きくなっています。

阿蘇の溶岩流地形

溶岩流により形成された阿蘇周辺の地形

火山の定量的評価

このように山体の体積に代表されるマグマの総噴出量は、火山の活動期間の長さに比例します。富士山のように一般的な火山は、数百年の休止期間と数日の活動期間を繰り返すことから、最も古い火山砕屑物の年代を調べることで活動期間がわかります。一方、阿蘇のように大規模なカルデラ噴火を起こす場合は、休止期間が数万年と非常に長くなるため、前述のような活動期間の特定は難しく、カルデラ噴火前の休止期間の長さと噴出量の関係から噴出率を求めた上で、山体の体積や堆積物の量などを総合的に考えることで、活動期間を推定する必要があります。

以上のような考え方に基づくと、阿蘇では数万年の休止期間に対して噴出量(=カルデラの体積)が数百立方km、新富士火山では数千年の活動期間に対して噴出量(=山頂部の体積)が数十立方kmであることから、噴出率は比較的近い値をとることが言えます。このように噴出率がカルデラの形成の有無に関わらず一定である背景には、阿蘇および富士山に対するマグマの供給はいずれも、フィリピン海プレートの沈み込みによるものである、ということが関係しているといえます。また、一回の噴火における噴出量は、休止期間の長さにある程度比例していることがわかります。

火山の進化

日本のように圧縮場にある火山は、初期は単成火山の形をとり、成長して山体の重さを増すにつれて、プレートの沈み込む方向に岩脈が発達することで複成火山へと成長します。この段階では放射状岩脈と呼ばれる、中央火道から寄生火山へと伸びる火道によって形成された岩脈や、シルと呼ばれる、成層火山の層に平行な岩脈が形成されます。

さらに火山の活動が進行すると、中央火道直下のマグマ溜まりには層状貫入岩体と呼ばれる、分化した岩石が地層のように沈積した形状の深成岩体が形成されていき、その周辺部に火道が形成されることで、環状岩脈や、コーンシートと呼ばれる円筒状の貫入岩体を形成します。

マグマ溜まりの冷却は、厚さ100m程度では熱伝導により1000年程度で起こる一方、厚さ1km程度では熱伝導だけでは冷却に10万年かかり、火山の活動期間に匹敵する時間となります。一方、マグマの温度が地殻の融点以上である場合は、対流および地殻の融解により冷却が急速に進むため、100年から1000年程度で冷却します。これらのことから、噴火の間隔が1000年からそれ以上の場合、マグマが十分に分化した状態で噴出することが予想されます。

マグマの上昇・噴火

上昇するマグマに含まれるH2Oなどの気相が少ない状態では、溶岩流や溶岩ドームの形で地表に噴出することが多く、液体中に気泡が分散する気泡流の形をとります。一方、マグマに溶けていたH2Oは地表付近での減圧に伴い溶解度が減少することから、気相として析出し、液相のマグマと気相のH2Oの混合物に対する、気相の割合が75%を超えると破砕面を形成し、それよりも上部では噴霧流の形をとって上昇します。

休止期間が長く、火道内を上昇するマグマの量が多い場合、相対的に火道の壁面を通してH2Oなどのガスが抜け出す割合が小さくなるため、噴出時の気相の割合が75%を超えることで、プリニー式噴火を発生させます。そのため、プリニー式噴火の多くは珪長質マグマを噴出に伴われますが、玄武岩質マグマの噴出によりもたらされる可能性もあります。一方、珪長質マグマにおいて火道内で効率的に脱ガスが行われた場合は溶岩ドーム、玄武岩質マグマの場合は溶岩流を形成することが多くなっています。

一方、ブルカノ式噴火は、局所的に火道内にガスが蓄積することで、蓋をしていた岩塊が瞬時に吹き飛ばされることによって発生します。また、ハワイ式噴火やストロンボリ式噴火に見られる間欠的な爆発も、局所的に気相の割合が高くなる場所が形成されることによるものであると考えられます。ハワイ式噴火では岩脈が地表付近まで発達することから割れ目噴火の形をとる一方、ストロンボリ式噴火では玄武岩質または安山岩質マグマの破砕を伴うため、火口の周囲にスコリア丘や、軽石による火砕丘を形成します。

火山砕屑物の堆積

プリニー式噴火のように地表付近で噴霧流を形成し岩石の破砕の程度が大きい噴火では、地表に噴出した後に空気と混合することで渦を形成します。砕屑物と空気の混合の割合によっては、空気よりも密度が小さくなることがあるため、その場合は火山噴煙柱として空気中を上昇し、十分に冷却したのちに降下火砕物として地表に砕屑物を堆積させます。このとき、落下速度は粒径が大きいほど速くなるため、下位ほど粗粒の級化構造を示します。

一方、砕屑物と空気の混合物が、空気よりも密度が大きかった場合、火砕流を形成します。火道の径が大きく、相対的に空気の混合が進まなかった場合などに発生します。この場合、一般的には砕屑物の堆積構造は分級が進まず、細粒火山灰の割合も高くなります。さらに地形の影響を受けにくいため、谷地形の部分が埋め立てられることで、谷地形の部分に厚く堆積するという特徴もあります。

マグマの噴出時に地表水が周辺にある状況では水蒸気爆発、地表水と混合した状況ではマグマ水蒸気爆発が発生し、その場合は水の膨張率がマグマに比べて10倍程度に高いため、爆発的な噴火が起こります。このときも岩石の破砕度が高くなるため、火山噴煙柱や火砕流を形成することがあります。また、爆発が非常に大きいため、爆発カルデラマールのような地形の形成や、山体崩壊を起こす可能性があります。

まとめ

・マントルカンラン岩の部分融解によって玄武岩質マグマが初生マグマとして発生することが多く、プレートの拡大境界、ホットスポットでは減圧融解、プレートの収束境界では加水融解が起こる。

・海嶺の沈み込みや背弧海盆の拡大に伴う高温条件では、プレートの収束境界で含水玄武岩の部分融解により、安山岩質の初生マグマを形成したり、堆積岩の部分融解により珪長質のマグマを形成することがある。

・マグマの上昇に伴い、地殻物質が取り込まれることで次第に冷却しながら分化が進行する。上昇は浮力の中立点で一旦止まり、マグマ溜まりを形成する。

・引張応力場では複成火山を取り囲むように寄生火山が発達しやすい。一方、圧縮応力場では初期は単成火山群を形成し、火山体の成長に伴って、プレートの沈み込み方向と同じ向きに配列する岩脈を形成する。

・一回の噴火に対する噴出量は休止期間の長さに比例する。また、マグマの分化・冷却は1000年以内に起こるため、それ以上の休止期間を経た後の噴火では、十分に分化が進んでいる可能性が高い。

・火道の径が大きい場合は、火道中における脱ガスが進行しにくいため、噴霧流を形成することでプリニー式噴火を起こす可能性が高い。また、噴出後に取り込まれる空気の量が相対的に少なくなることで、空気よりも密度が高くなり、火砕流を形成する可能性が高い。

・穏やかな噴火を起こすことが多い火山であっても、地表水や地下水が噴出するマグマに熱せられることで水蒸気爆発やマグマ水蒸気爆発などの爆発的な噴火を起こすことがある。

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