構造地質学の基礎【小地形と地層の形成】

はじめに

前回は、世界の大地形がプレートテクトニクスと呼ばれるモデルによりその成り立ちを説明できることを理解しました。今回は、場所的・時間的スケールを狭い範囲に絞り、侵食・運搬・堆積もしくは風化によって形成される小地形や地層の成因を見ていきながら、各作用とそれらが及ぼす影響のスケールをつかんでいきたいと思います。

沿岸部の小地形

約300万年前に始まった第四紀は、それ以前の白亜紀や古第三紀に比べて寒冷であるとともに、氷期と間氷期のサイクルによって特徴づけられます。氷期には極付近が氷河や氷床に覆われるとともに、北極海が海氷で覆われることで、世界規模での海退、つまり、海面の低下が起こります。一方、間氷期には海氷が融けることで、世界規模での海進、つまり海面の上昇が起こります。

一方で、局地的に見ると、間氷期を迎えたことで氷河や氷床が陸地から消えたために、アイソスタシーを保つ働き(モホ面における荷重が長期的には一定になる)によって、他の場所に比べて速い速度で隆起するために、相対的な海面の上昇速度が小さくなるか、相対的にはむしろ、海面が低下しているような場所が見られ、その一つに、U字谷やフィヨルドなどの地形が見られるスカンジナビア半島が挙げられます。

沿岸部の小地形や地層は、このような海面変動のサイクルによって形成されたものが多くなっています。海面変動による海進や海退を反映している、特徴的な一連の地層はシーケンス層序単元と呼ばれ、それらを区切るいくつかの不整合面により特徴づけられます。

地層の形成と層序

一般的に地層は、湖や海など、運搬作用によって運ばれてきた砕屑物の堆積または、火山噴火による火山砕屑物の堆積によって形成され、褶曲や断層の働きが無い場合は、上に行くほど新しい地層となります。しかし、陸上では侵食作用や風化作用が水中に比べて活発であるため、一旦形成された地層が陸上に出ると、その一部が損なわれるため、その部分の上下で年代的に不連続な面が現れます。これを不整合面といい、シーケンス層序単元においては、海退期であったことを示す不整合面をシーケンス境界面と呼びます。

一方、不整合面が形成されるのは陸上だけでなく、波浪侵食によって陸に非常に近い部分の海底も侵食を受けます。特に海進期には、波浪侵食を受ける範囲が拡大または移動することで広い範囲に不整合面が形成されることから、その不整合面を海進面と呼びます。

また、海水準が最大に達すると、元々地層が活発に形成されていた場所が陸地から離れることで、その場所の堆積速度が低下します。そのような部分では、化石や生痕化石、定期的な火山の噴火による凝灰岩の層が占める割合が相対的に増えることによる、コンデンスト・セクションと呼ばれる層が形成され、そのような層に特徴づけられる面を最大海氾濫面と呼びます。

ここまでに述べた不整合面は、狭い範囲では年代が一致するとは限りませんが、海進・海退は全世界的に起こるため、離れた場所における年代の対比に有効となっています。ほかに、鍵層とよばれる凝灰岩の層や、示準化石と呼ばれる、特定の年代に、広範囲にわたって生息していた生物の化石が含まれる層もまた、離れた場所における年代の対比に使われ、後者における、示準化石を含む特徴的な層を生層序単元といいます。

一方、局地的な堆積環境の変化を示す、特徴的な層序を岩相層序単元といい、堆積岩の種類だけではなく、後述するベッドフォームと呼ばれる、流速・流向を反映して堆積物に形成される葉理の種類の変化によって区分されることもあります。同一の岩相を持つ1枚の地層を単層と呼び、それらは異なる岩相との間の層理面により区分されます。また、複数の単層は、岩相の類似性によって部層層(累層)の順にまとめられることがあり、不整合面によって区分される層の集合を層群とまとめることが多くなっています。

また、不整合面の下位の地層(古い方の地層)が、褶曲や断層による変形を受けず平行である場合、そのような不整合を平行不整合(非整合)といいます。これが傾斜している場合は傾斜不整合、火成岩や変成岩である場合を無整合といいます。

堆積相解析

単層を区切る層理面は水平に形成されることが多いですが、単層内における砕屑物の堆積は、必ずしも平行に起こるわけではなく、流速や流向に応じて異なる堆積の形態をとり、その形態は、葉理と呼ばれる地層内の模様によって観察されます。また、流速に応じて、河床にベッドフォームと呼ばれる特徴的な小地形を形成します。

流速とベッドフォームの関係

砂と呼ばれる、粒径1/16mm~2mmの砕屑物は、流速が16cm/s~32cm/sにかけて移動を開始し、64cm/s~128cm/sにかけて侵食されます。ベッドフォームの形態は、この関係を反映しています。

低領域平滑床:流速10-20cm/sの範囲で、平坦な河床が形成される。葉理は地面に水平な平行葉理を形成する。

リップル:20-30cm/sの範囲で、波長30cm以下の、左右非対称の波状の河床が形成される。葉理は、下流側に傾斜した斜交葉理が形成される。

デューン:30-100cm/sの範囲で、波長30cm以上の、左右非対称の波状の河床が形成される。葉理は、下流側に傾斜した斜交葉理である。

高領域平滑床:流速100-150cm/sの範囲で、平坦な河床が形成される。葉理は平行葉理である。

アンチデューン:流速150cm/s以上の範囲で、左右対称の波状の河床が形成される。葉理は、上流側に傾斜した斜交葉理が形成される。

以上のようなベッドフォームの流速による変化は、砂が移動しない低領域平滑床から始まり、リップルからデューンにかけて砂が移動し始めることで葉理を下流側に傾斜させながら押し流されていき、砂が侵食される流速に達することで高領域平滑床になる、という捉え方ができます。また、流速が速くなってアンチデューンを形成すると、波の間に、川全体の流れとは逆の流れが発生することで、上流側に押し流されることから、葉理が上流側に傾斜すると言えます。

堆積相モデル

一連の堆積物の中にあらわれる堆積相の変化は、時間的な連続性と同時に、場所的な連続性も示します。これをワルソー則といいます。以下に、その例として蛇行河川を挙げます。

蛇行河川において、流れの外側は攻撃面と呼ばれ、侵食が進みます。一方で、流れの内側はポイントバーと呼ばれ、外側に侵食が進むにつれて流速が低下していくため、堆積が進みます。また、川の断面で見ると、水面付近では遠心力により内側から外側への流れが形成される一方、河床付近では水圧により外側から内側への流れが形成されます。

このような河床付近の流れは、当初は速いため礫のみを堆積させますが、次第に外側への侵食が進むと流れが遅くなり、川の外側に傾斜した斜交葉理を形成します。これをイプシロン型斜交葉理といいます。そして、さらに流速が遅くなるにつれて、イプシロン型斜交葉理が形成される堆積環境は次第に川の外側へと移っていき、元の場所には平行葉理が形成されるようになります。

さらに蛇行が進むと、その場所は自然堤防、後背湿地と移り変わるため、平行葉理を伴う砂の堆積が終了したのち、堆積相は礫、砂、泥の順に遷移する氾濫原堆積物へと移行します。ここで、ある場所における堆積相の遷移は、下から順に、礫、斜交葉理、平行葉理、氾濫原堆積物の順に変化しました。このような変化は、川の外側から内側にかけての堆積相の遷移をそのまま反映しています。つまり、堆積相の時間的な隣接と、場所的な隣接は必要十分な関係にある、というのがワルソー則です。

また、ある場所における堆積相の遷移を下から順に示したものを堆積相モデルといい、隣接する場所で、今後どのように堆積相が変化していくか、といった予測に使うことができます。

海底の地形と層序学

海底の堆積環境は、深さによって変化するとともに、陸地からの近さによっても変化します。

陸地から十分離れており、砕屑物の供給が無いような深海は遠洋性堆積環境と呼ばれ、炭酸塩補償濃度(CCD)よりも浅部にはサンゴや有孔虫由来の石灰岩の堆積、深部では炭酸カルシウムは海水に溶解するため、放散虫由来の珪質堆積物および、少量の泥質堆積物が見られます。このような深海では流速が遅いため、流速に応じた堆積相の変化は見られず、均質な塊状の堆積物に特徴づけられます。一方、中央海嶺周辺や、大陸斜面など、高低差のある地域では、コンターカレントと言われる、年に数度、数日間にわたる強い流れが生じることがあり、深層嵐とも呼ばれます。流速は15cm-40cm/sで、斜交葉理が発達する堆積物を生じることもありますが、層理面が不明瞭であることも多く、基本的には塊状のコンターライトの堆積により特徴づけられます。

大西洋や、太平洋の大陸斜面のように、比較的陸地に近い深海底には、海底谷―海底扇状地と呼ばれる一連の地形が形成されます。海底谷は、河川の延長線上に位置することが多く、陸地付近から続いていることもありますが、多くは途中が大陸棚堆積物により覆われており、海底谷への砕屑物の供給は、海面低下時に増加します。海底谷は大陸斜面を侵食しており、大陸斜面から深海底に移り変わる場所に海底扇状地を形成します。

大西洋における海底扇状地は、泥質堆積物に富み、数百万年にわたって安定することから巨大になっている一方、太平洋における海底扇状地は、砂質堆積物に富み、海溝や斜面堆積盆に形成されることも多く、斜面崩壊によって数十万年程度で消滅します。後者では砕屑物の供給の多くが海底谷―海底扇状地を通して行われますが、前者では斜面崩壊による大陸棚砕屑物の供給がそれを上回っています。

砕屑性大陸棚環境

大陸棚における堆積環境は、海面変動に大きく左右されます。ここではシーケンス層序学のモデルに基づいて、海進から海退までの堆積環境の変化を見ていきます。

低海水準期:海面が最も低く、堆積空間が減少するため、陸上で侵食されることによる砕屑物は、大陸斜面の海底谷から深海底へと運搬されます。実際には、粗粒な砂を中心とする乱泥流の形で運搬されることで、海底扇状地には砂が堆積します。

海進期:海水準が上昇することによって、海水面は陸地側に移動していきます。これを海進といい、大陸棚は侵食の場から堆積の場へと移行します。また、海水面の上昇に伴って陸地では侵食に比べて堆積が活発になることから、砕屑物の供給も減少します。そのため、海面が上昇して陸地が減った部分には浅海堆積物が堆積しますが、それらが陸地に出てくることはありません。

高海水準期:海面が最も高く、海水準の上昇速度が緩やかになると、海進期に形成された浅海堆積物を中心に、河川により運搬されてきた粗粒な砕屑物を堆積させ、陸地を再び拡大させます。この時期には大陸斜面から供給される砕屑物は非常に少なくなり、深海底にはコンデンスト・セクションが発達します。このようにして形成された層は、海退期において侵食をうけます。

現在は高海水準期にあたり、縄文海進に引き続いて大陸棚は堆積の場となっています。また、最も海面が高かった時期までに河口付近に形成された堆積物は、現在は地上にあらわれており、沖積層と呼ばれています。三角州もまた、高海水準期における特徴的な地形です。なお、洪積層は、日本のように隆起速度が比較的速い場所において、第四紀以降の氷期・間氷期のサイクルによって同様に形成されたかつての沖積層であり、河岸段丘や海岸段丘において沖積層と隣接していることが多いです。

このような大陸棚の堆積環境は、潮汐優勢大陸棚、海流優勢大陸棚、波浪優勢大陸棚に分けられ、潮汐優勢大陸棚では引き潮時の潮汐底層流による砂の運搬・堆積によるデューンの発達が広範囲に見られ、海流優勢大陸棚では、幅の狭い、流れに平行なベッドフォームが形成されます。一般的には陸地に近い大陸棚の浅部は波浪優勢大陸棚の堆積環境を示すことが多く、深さによってさらに堆積環境が細かく区分されます。

前浜:満潮時と干潮時の水面の間にあたる区間。前浜の上部では波の打ち寄せにより、海側に傾斜が見られる平行葉理が発達する。前浜の下部では波の振動によってウェーブリップルと呼ばれる、両方向に傾斜した葉理が発達する。

上部外浜:静穏時波浪限界水深と呼ばれる、波浪の振動が海底面に影響を与える限界の水深以上の区間。沿岸流が卓越するため、沿岸流による海岸線と並行な斜交葉理が発達する。

下部外浜:暴風時波浪限界水深以上の区間。平穏時は波浪や沿岸流の影響を受けないが、暴風時に海底に波の振動が伝わることから、波長の短い丘状の地形を形成し、ハンモック状斜交葉理が発達する。

沖浜:静穏時には泥が堆積し、暴風時に砂が移動して堆積することがあるため、砂泥互層を形成する。平行葉理を示す。

砕屑性海浜環境
河川優勢デルタ

河口部には、河川の流れや波浪、潮汐の影響によって異なる地形が発達します。河川の運搬力が波浪、潮汐に比べて十分強い場合は、デルタは河道を転移させながら海側に発達することで、鳥趾状三角州を形成します。

波浪優勢デルタ

河川の運搬力が波浪に比べて十分弱い場合は、デルタの堆積物が再移動することで、海浜や海岸砂丘を発達させるとともに、河口の前面にバリア島やバリアリーフと呼ばれる地形の高まりを形成し、その内部にラグーンと呼ばれる潟湖を作ることがあります。このように潟湖が形成されると、タイダルインレットと呼ばれるバリア島の切れ目には潮汐によって流れが生じ、海側の出口には引き潮に伴う、陸側の出口には満ち潮に伴う潮汐デルタが形成されます。また、河口部には、潮汐に伴う湿地および、その前面に干潟が形成されます。

河川の運搬力が、バリア島を形成するほど弱くない場合は、海岸砂丘が発達します。

潮汐優勢デルタ

波浪優勢デルタにおいて形成されるようなバリア島は、潮汐差が4m以上になると形成されず、湿地干潟が河口周辺に発達し、引き潮による砂が、潮汐流砂体と呼ばれる地形の高まりを形成します。

日本に見られるデルタは河川の運搬力が比較的強いため、河川優勢デルタと潮汐優勢デルタの双方の性質をもつ典型的デルタ(混合デルタ)であることが多いです。つまり、河道を転移させながら粗粒の砕屑物を河口付近に堆積させ、その前面に湿地や干潟を形成します。

沖積環境

沖積環境における河川は、掃流河川、掃流・浮遊混合河川、浮遊河川に大別されます。

掃流河川は、勾配が急で浸食や運搬が活発なため、側方侵食によって川幅が比較的広い河川であり、直線的な水路と、それらを隔てる縦州(河川の流れに平行に伸びた州)を複数持つことから、網状河川とも呼ばれます。掃流河川の河口には扇状地が形成され、勾配変化が緩やかで、土石流の堆積も少ない場合は流水優勢扇状地、勾配変化が急で、土石流の堆積がある場合は、半乾燥扇状地と呼ばれる表面が枯れた扇状地が形成されます。

掃流・浮遊混合河川は、掃流河川ほど勾配が急ではないため、側方侵食と下方侵食によって自由蛇行が発達し、自然堤防や氾濫原を伴う蛇行河川を形成します。蛇行の波長は、川幅や曲率半径に比例するとともに、砕屑物の供給量は川幅の二乗に比例するなどの関係が成り立ちます。蛇行河川が形成される沖積層が隆起することで、河川は勾配を一定に保つために、蛇行の曲率半径を大きくすることで、流路を次第に変えていきます。蛇行が大きくなると、蛇行した部分どうしが繋がることで、川が流れなくなった部分に三日月湖を形成する、カットオフが起こる場合と、新たな流路が形成される転位が起こる場合があります。

浮遊河川は、勾配が非常に緩やかで、長い間河道が安定します。自然堤防は植生に覆われることから流路を変えることはほとんどなく、さらに堆積速度が非常に遅いため、非常に川幅が広くなります。交差河川と呼ばれるこの形態の河川は、日本ではほとんど見られず、大陸に発達します。

堆積岩の生成

陸源性砕屑物の堆積過程

陸源性砕屑物の原岩は、堆積岩や陸上に露出した火成岩や変成岩であり、それらは風化作用を受けて砕屑物となります。このような砕屑物が侵食作用・運搬作用によって河川を運ばれ、氾濫原や大陸棚などに堆積したのち、続成作用を受けて堆積岩を形成します。ここからは、各作用の詳細を見ていきます。

風化

風化には物理的風化と化学的風化の二種類があります。

物理的風化とは、地表露出後に岩石に対して亀裂が入ることで、砕屑物化する現象です。亀裂が入る要因としては、岩石は高圧下で生成されることが多いので、地表に露出することで減圧することによるもののほかに、昼夜の温度差による岩石中の鉱物や間隙水の膨張や収縮によるもの、間隙水の凍結、植物の根の成長によるものが考えられます。

特に花崗岩は、膨張率の異なる鉱物同士が接しているため物理的風化を起こしやすく、長石や雲母が粘土鉱物化することで、真砂(まさ)と呼ばれる細かい砂状の砕屑物になるとともに、コアストーンと呼ばれる風化をまぬがれた岩石を残して化学的風化により溶脱していきます。

化学的風化作用は、原岩に含まれる鉱物が、水や二酸化炭素と反応することで含水状ケイ酸塩鉱物(いわゆる粘土鉱物)に変質する現象です。空気中の二酸化炭素濃度が大きい場合はこの作用が進行しやすいため、白亜紀のように二酸化炭素濃度が高く温暖な時期には、化学的風化作用も活発だったと考えられます。

化学的風化により、岩石に残りやすい元素と、溶けだしやすい元素があり、前者はニッケル、鉄、アルミニウムなど、後者はカルシウムやナトリウムなどが挙げられます。つまり、泥岩や土壌においてCaやNaが多く含まれている場合、それらは寒冷地や乾燥地帯のように雨の少ない場所で生成されたため、化学的風化をあまり受けていないと説明できます。一方、Ni、Fe、Alが多く含まれる泥岩や土壌は、温暖湿潤地帯や熱帯雨林帯において生成されたと考えられます。熱帯雨林帯に生成されるラテライトはFeやAl成分を多く含み、特にアルミナ(Al2O3)に富むものをボーキサイトといいます。

また、石灰岩(CaCO3)も化学的風化により二酸化炭素および水と反応することで炭酸水素カルシウムを作ることで溶解します。

運搬

運搬は、掃流または集合流のいずれかによって起こります。

掃流

掃流は、一定の流速を超えることで河床の砕屑物が押し流され、転がるように移動する転動や、跳ねながら移動する躍動によって運搬される作用のことをいいます。また、砕屑物の粒径が十分に小さく、沈降速度が流速に比べて小さい場合は浮遊により運搬されます。

掃流が起こり始める条件は、砂以上の粒径であればレイノルズ数の大きさ、すなわち、慣性力を支配する質量が大きくなるほど最小の流速が大きくなるという関係があります。一方、粒径が小さいシルトや粘土については粘性力が支配的になるため、掃流を開始する最小の流速は一定になります。しかし、実際はファンデルワールス力により凝集していることが多いため、その場合、より大きな流速を必要とします。また、一旦掃流を開始すると、沈降速度が十分小さいため、浮遊により運搬されます。

さらに、粘土は運搬中に濃度が十分高い場合、やはりファンデルワールス力により凝集し、フロックと呼ばれる粒子の集合体を形成して、沈降速度はストークス則にしたがって、粒径の二乗に比例して増加します。このように粘土は凝集しやすい性質を持ち、その性質をフロキュレーションと呼びます。

集合流

集合流は堆積物重力流とも呼ばれ、運搬される砕屑物の密度によって、低いものから乱泥流、液状化流、土石流、粒子流の順に運搬機構が変化していきます。運搬の形態はレイノルズ数によって支配され、レイノルズ数が低い場合は粘性力が支配的になるため、砕屑物は流向に平行に移動する一方、高い場合は慣性力が支配的になるため、砕屑物の動きは一定ではなくなります。

乱泥流

砕屑物の密度が低い場合は、地面付近ではレイノルズ数が低く、層流と呼ばれる、砕屑物の動きが流れの方向に平行な流れを形成する一方、地面から十分に離れている部分では高いレイノルズ数により乱流と呼ばれる、砕屑物の動きが流れの方向によらない流れを生じます。この乱流中では砕屑物と液体が混じり合うことで密度が大きくなるため、密度流と呼ばれることもあります。

さらに、頭部と呼ばれる乱泥流の先端部は特にレイノルズ数が高くなるため、舌状の形になるとともに、その後に続く体部に比べて厚さが大きくなります。頭部と体部の間は首部と呼ばれるくびれた形になっており、海底で発生するタービダイトの場合はこの部分から水が取り込まれます。

乱泥流が静止するときには、はじめに層流を形成している地面に近い部分が急激に静止し、その部分には比較的粗粒の粒子(小石程度)が塊状構造をとって堆積します(Ta部)。その後、乱流を形成している地面から離れている部分は、下部ほど速度の減少が急激なため、下から順に高領域平滑床(Tb部)、リップル葉理(Tc部)、低領域平滑床(Td部)、泥の堆積(Te部)のような級化構造が見られます。このように乱泥流堆積物に見られる特徴的な級化構造をブーマ・シーケンスといい、この特徴をもつ乱泥流堆積物を狭義のタービダイトといいます。また、底部には侵食による流痕が形成されることがあり、地層中にソールマークとして観測されます。

土石流

砕屑物の密度が大きい場合、レイノルズ数が小さくなることで、流れの全体にわたって層流が形成されます。乱泥流では礫を運搬するのに十分な流れではない一方、土石流のような流れによって流体中に浮力を生じるため、比較的細粒な礫を運搬することができます。このような性質を持つ流体をビンガム流体といい、乱泥流のようなニュートン流体と区別されます。

流れの形状は先端と呼ばれる舌状の部分と、そのあとに続く体部に分けられ、流れの底部には栓流と呼ばれる剛体的な等速度域が存在します。一方、ビンガム流体は勾配の増加などの要因によって速度が大きくなって乱流に移行すると粘性力が急激に小さくなることでレイノルズ数が大きくなるため、再び層流に戻ることはなく、このように形成された乱流では、粒子間衝突による力が支配的な運搬機構になります。

また、層流である土石流の停止は全層にわたって急激に起こるため、泥粒子から礫までが混在する構造となり、級化構造は形成されません。

粒子流(ダイラタント流)

粒子間衝突による力が支配的になる場合は、ビンガム流体の乱流だけでなく、粗粒の粒子間が高密度の流体により充填されている場合に、粗粒の粒子間が衝突することで形成されるダイラタント流が挙げられます。勾配が十分大きい場合は一様なダイラタント流が形成され、勾配が小さい場合は、上部では濃度が低く下部では濃度が高いことから、下部のみにダイラタント流が形成されるような二層流となります。

後者の二層流では、濃度の低い上部と濃度の高い下部との間の境界層に最も粗粒な粒子が集まって運搬されるため、粗粒な粒子を遠くまで運ぶことができる運搬機構であると言えます。この場合、堆積構造は下部ほど細粒、上部ほど粗粒の逆級化構造に特徴づけられます。

液状化流

液状化流は、間隙水に富む場合に発生し、間隙水の移動による浮力により形成されます。このような間隙水の移動はU字型の経路をたどって起こるため、堆積構造の断面には皿状構造を形成します。粒子同士の結合が絶たれているため、密度が比較的低い流れになります。

まとめ

・海進と海退のサイクルに伴い、堆積の場は長期的には変動する。現在は高海水準期にあたり、縄文海進を通じて形成されたデルタ(三角州)や、大陸棚における海底谷の埋積が見られる。

・流速や流向に応じて異なる方向に葉理が形成される。ベッドフォームの形態は、砂の移動のしやすさと関連している。

・河川、潮汐、波浪のいずれの作用が強いかによって異なる形態のデルタが発達する。

・沖積平野における河川は、勾配の緩急により分類される。

・亀裂が生じることで物理的風化、雨に晒されて二酸化炭素や水と反応することで化学的風化が起こる。

・運搬には掃流運搬と集合流運搬の二種類があり、前者は粒径によって、後者は密度の大きさによって異なる形態をとる。

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