第2回 断層と地震・日本の地震対策

今回の目標

・断層に加わる力と動き方の関係を理解しよう

・地震が起こる仕組みを理解し、日本で行われている地震対策を知ろう

Ⅰ 断層の種類

地面には押す力、引っ張る力、引き裂く力のように様々な力が複雑にはたらいています。その結果、地面の中でももろい岩石で構成された部分や、力が非常に集中した部分にひび割れが生じ、その部分が動くことで力を発散します。

このひび割れのことを断層といい、断層が動くことで地面に揺れが伝わることで地震が発生します。地震の原因には、火山性のものもありますが、多くは断層が動くことによるものです。

断層の部分にどのような力がはたらくかによって、断層の動き方が異なります。

正断層・逆断層

両側から引っ張る力によって動く断層を正断層といい、両側から押される力によって動く断層を逆断層といいます。

正断層・逆断層

この図を見ると、正断層ではもとの左右の位置関係は変わっていない一方で、逆断層では左右の位置関係が逆転していることが分かります。このように引っ張られるか押されるかによって断層の動き方は異なります。

横ずれ断層

正断層・逆断層のときとは異なる方向に力がかかった場合、ひび割れに沿って地面が横にずれて動くことがあります。これを横ずれ断層といいます。

横ずれ断層

右横ずれ断層

図のように、断層の方を向いている人から見て、向こうの地面が右に動いているとき「右横ずれ断層」、逆に、向こうの地面が左に動いているとき「左横ずれ断層」といいます。

Ⅱ 断層ができる場所・地震の種類

断層は地球上にまんべんなく存在しているわけではなく、できやすい場所があります。それが日本のような「プレートの境界」です。プレートとは、地表から比較的浅く、低温で固い部分のことをいい、その下にある高温のマントルのはたらきによって1年に数cmずつ動いています(「人の爪がのびる速さ」と言われることが多い)。

プレートの境界では、海側のプレートが陸側のプレートに対して沈み込んでいることが多く、沈み込む部分は水深が10000m近くになることがあります。これを海溝といい、100年から数百年の頻度で大地震が発生する逆断層があります(これにより発生する地震を「海溝型地震」という)。

また、沈みこむプレート自体が、下敷きを曲げたときのように曲がっていることで、上部では正断層、下部では逆断層が多くなっています(これにより発生する地震を「プレート内地震」という)。

さらに、海に堆積した岩石がプレートとともに全て地中に沈み込むわけではなく、途中で陸側のプレートに押し付けられることもあります。その結果、プレートの境界付近だけではなく、陸側のプレートにも、逆断層をはじめとした断層が多く存在します。これにより発生する地震を内陸型地震(直下型地震)と言います。

関東南部の地下数十kmから100kmにかけての範囲にも断層が存在しており、それが首都直下地震を引き起こすと言われています。しかし、その詳しい位置は特定されていません。

このように、断層ができる場所は、プレートの境界付近に極端にかたよっています。

Ⅲ 活断層

地球上に存在する断層には、プレートの移動方向が変わるなどにより動かなくなったものも多く存在します。これらを除き、断層は数千年から数万年の周期で大地震を起こしながら、力の加わり方に応じて決まった方向に動き続けています。このような活動の形跡が比較的最近(といっても200万年前から数十万年前)に見られる断層を、活断層といいます。

活断層が地中に存在するとき、その場所の地表では特徴的な地形がみられることもありますが、必ずしも地表に活断層の証拠が現れるわけではないので、地震が起こるまで活断層の存在に気づかない場合もあります。

Ⅳ 日本で行われている地震対策

地震の大きさを示す指標として、マグニチュードが世界共通になっています。マグニチュードは、小さな地震については実際に観測した地震の揺れ方を元に求めることができますが、大きな地震については、地震によって動いた断層の規模を元に算出する必要があります。東日本大震災では、それぞれの方法で求めたマグニチュードが8.4、9.1となっており、一般的には「マグニチュード9.0」と言われています。

日本では揺れの大きさを示す指標である震度10段階に分かれており、震度は計測器により求めます。日本のように地震が頻繁にはない海外では、震度は12段階に分かれている一方で、震度は実際の被害状況を見て判断します。

震度は以下の10段階に分かれています。

0, 1, 2, 3, 4, 5弱, 5強, 6弱, 6強, 7

震度1以上の「有感地震」と呼ばれる地震は、1年に数千回発生しています。震度0の、体に感じない程度の地震を合わせると、その回数は百倍になります。

日本には、地震のマグニチュードや、その場所の震度を求めることができる地震計が15kmに1個設置されています。この観測網を利用して、緊急地震速報が導入されています。

緊急地震速報では、大きく分けて以下の2段階の速報が出されます。

1段階目は、S波よりも先に到達するP波の観測をもとに、その地点でS波が到達したとき、どれくらいの震度になるのかを予測します。予測された震度が4以上の場合、その地域が緊急地震速報の対象となります。

2段階目は、ある地点で実際に震度4以上の揺れが観測されたとき、そこに隣接する地点が緊急地震速報の対象となります。これは、東日本大震災のときに実際に大きな揺れを観測した関東地方に緊急地震速報が出せなかったことを踏まえています。

Ⅴ 地震に関する用語

震源・震央

断層で地震が発生するときは、ある場所の岩石が破壊されることで、その破壊が連鎖的に断層に沿って起こります。このうち、最初に破壊された場所を震源、最終的に破壊された範囲を震源域といいます。

震源は地中にあるため、地表面からの距離を「深さ」で表します。また、震源の真上にあたる地表面を震央(しんおう)と言います。

P波・S波

1つの地震で2種類の揺れが発生します。P波は秒速6kmから7km程度で伝わっていく縦波で、初期微動をもたらします。S波は秒速3kmから4km程度で伝わっていく横波で、主要動をもたらします。

P波が伝わってからS波が伝わるまでの時間(初期微動継続時間)は震源からの距離に比例します。このことから、震源から遠いほど、地震の最初に起こるカタカタとした揺れが長い間続くことが分かります。

まとめ

・日本はプレートの境界に位置するため、様々なタイプの地震が頻繁に発生する。

・活断層による内陸型地震は数千年から数万年に1回、海溝型地震は数百年に1回発生する。実際には活断層の数自体が非常に多いため、どちらも起こりやすい。

・日本では発達した地震観測網により、震度4以上の地震になると予想される地域に緊急地震速報が発表される。そのしくみは、東日本大震災をふまえて改良されている。

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