京都駅大解剖〈中編①〉 京都駅アトリウムのデザイン

京都駅大解剖

「京都駅大解剖」について

 前回は、京都駅を設計した原広司の設計思想について解説した。今回は、京都駅を「デザインの博物館」として見立てて、京都駅の見どころについて解説していこうと思う。また、「京都駅大解剖」というタイトルで、いずれホームページを作りたいとも思っているので、その下書きとしてこの記事を書かせていただきたい。下書きのため、地図などを自分で作って、それを使って解説することができないため、位置関係などが分かりにくいものとなってしまうことは申し訳ない。

原広司のデザインは機能的

 原広司がデザインした(と思われる)要素が、アトリウム内にもまた、多くちりばめられている。それらの共通点として、機能的なデザインであるということが言える。

京都駅アトリウムを東側から眺める

 京都駅のシンボルでもある、アトリウム(ガラス張りの屋根で覆われた巨大な空間)。関空特急はるかなどが到着する0番線や、山陰本線(嵯峨野線)の到着する30番線以降のホームから直結している、烏丸口にある改札を抜けると、すぐに開放的なアトリウムにたどり着けるが、東海道本線や奈良線、東海道新幹線を利用する人にとっては馴染みがない場所かもしれない。0番線以外のホームからは、階段を上ると西口に接続する南北連絡通路(新幹線乗り換え口もある)に出られる。西口または新幹線中央口を出ると、「南北自由通路」に出られるので、北側(改札を出て右側)に向かうと、烏丸口の二階(画像ではオブジェの下のあたり)に出る。アトリウムは、京都駅ビルの設計者である原広司が「谷」をイメージして生まれた空間である。一階には先ほどの烏丸口(中央口)が画像の左下に見え、画像右下には正面口があり、バスターミナルに接続する。地下への連絡エスカレーターが画像下中央部に見える。画像ではオブジェに隠れて全体像が見えないので、別の角度から撮ったものを載せておく。特徴としては、改札を出てからアトリウムを通過し、正面口まで出るという動線を維持しつつ、地下への動線と、待ち合わせスペースを兼ねているということが挙げられる。渡り廊下的な通路を、直線ではなく敢えて曲線にしたデザインには、内側ほど動きが慌ただしくなり、通過する人がメイン、外側ほど動きが緩やかで、待ち合わせなどにより滞留する人がメインになるといった効果が表れている。

 一階からアトリウムの天井を見上げると、ホテルの建物が直射日光を遮っているため、適度な明るさに保たれている。昼間は光源が空となっているため、構造体が影として浮き上がってくる。しかし、多くの人の視線は、いかにも不安定そうに立つオブジェにピントが合っている。私たちは、このように有機的なデザインに親近感を覚えるのだ。そして、このオブジェを上から見てみると、人工地盤から取り残されて切り取られたかのように、驚くほど平らであることがわかる。このことから、実際に人が駅として使う低層の空間と、人工地盤上の様々な用途に使われる高層の空間とを、ゆるやかに仕切る、そういった役割がこのオブジェにはあると思う。

 このオブジェの上部には、排水溝が作られている。まさに京都駅の利用者や管理者に配慮したデザインである。原広司は、デザインは機能に合わせて作られるべきだという均質空間的な考え方をしない。というのも、機能に合わせて作られたデザインが、逆に合理性を欠くという例は多いからだ。西洋建築の流れを汲んだ均質空間が、他の風土には適していない、という事例を多くみてきた原広司ならではの視点である。京都駅ではその視点が十分に活かされ、デザインそのものが合理的であるという域に達していると言える。

 今回は、京都駅アトリウムについて解説した。このように、とりあえず歩きたくなるような工夫が京都駅ビルには凝らされているのである。次回は、京都駅烏丸口の周辺に足を延ばし、様々なデザインを探していこうと思う。

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