エピソード5 プレートテクトニクス

ジャイアント・インパクトにより形成された月は鉄、カルシウム、アルミニウムを地球よりも高い割合で含んでいる。これは地球表面を構成していた橄欖岩(かんらん岩)が衝突によるエネルギーによって高い割合で溶融し、ケイ素を除く大半の元素が地球表面から月に移動したことを示している。地球表面から重い元素が取り除かれることでその場所にマントルの上昇流が生じ、橄欖岩の溶融がさらに進行する。このとき鉄やカルシウムなどの大きい元素が取り除かれる一方で、ケイ素などの小さい元素がマントルに残った。

これによりマントル内にテクトスフェアと呼ばれる軽く安定した領域が形成された。この部分は後の地殻変動の影響をあまり受けなかったことから、安定陸塊とも呼ばれる。一方で、鉄やカルシウムなどの大きい元素が残った場所では部分溶融した橄欖岩が表面で冷えることで玄武岩質の海洋地殻が形成された。さらに地球の表面が冷えると大気中に含まれていた水蒸気が雨となり、海洋地殻の表面を水が覆った。

水により強度の低下した海洋地殻は割れ目を生じ、テクトスフェアに対して沈み込みを開始した。プレートテクトニクスの開始である。海洋地殻の部分溶融により鉄やカルシウムよりも大きなナトリウムやカリウムなどの元素が上昇していき、それらが表面で冷えることで花崗岩質の大陸地殻が形成された。

ジャイアント・インパクトがもたらしたマントル対流、そして水の存在によりプレートテクトニクスが始まった。これにより地球の運命は大きく変わっていく。

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